2014年7月号 [Vol.25 No.4] 通巻第284号 201407_284010
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 7 地球温暖化の緩和策 —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問16地球温暖化対策にある2つの考え方、「緩和策」と「適応策」の説明として、最も適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 85%
- ① 温室効果ガス排出量を削減する対策は「適応策」の考え方である
- ② 気候変動にあわせて、例えば、農作物の種類を変更する対策は、「緩和策」の考え方である
- ③ 日本では、「緩和策」よりも「適応策」を優先している
- ④ 「緩和策」と「適応策」に同時に取組むことが必要不可欠である
- ヒント
- 温室効果ガス排出量の削減と気候変動の影響への対応を同時に取り組むことが必要です。
- 答えと解説
-
答え: ④
「緩和策」は、温室効果ガスの排出量を削減する方策です。例えば、再生可能エネルギーの利用や省エネ、Fガス類の回収といった対策などが該当します。
「適応策」は、気候変動に対する脆弱性(ぜいじゃくせい)を低減させる(気候変動の影響に対応する)方策です。例えば、洪水の影響を抑える対策(堤防の強化など)、温暖化に対する適応([農業分野]暑さに強い品種の開発など)、水不足対策などが該当します。
これまで日本を含む多くの国では「緩和策」を先行させて実行していましたが、世界各地で温暖化の影響がみられるようになってきており、「緩和策」だけでは気候変動による影響をすべて回避できなくなってきています。このため、温室効果ガス排出量の削減と気候変動への対応を同時に取り組むこと、すなわち「緩和策」と「適応策」を同時に取り組むことが必要不可欠となっています。
問17コジェネレーションの説明として、最も適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 77%
- ① 発電時に生じる排熱も利用するという電気と熱を同時に供給するシステムである
- ② ライフスタイルの世代間ギャップを埋めるという概念を説明した用語である
- ③ ヒートポンプの使用方法のひとつで発生する冷熱と温熱を両方利用することである
- ④ 自社のエネルギー消費を減らすため、企業間連携で共同生産することである
- ヒント
- コジェネレーションは「熱電併給」とも呼ばれています。
- 答えと解説
-
答え: ①
コジェネレーションは、内燃機関等で発電し、その排熱を利用して、動力・温熱・冷熱を取り出すことで、総合エネルギー効率を高めたエネルギー供給システムのことです。例えば、天然ガスコジェネレーションは、天然ガスをタービン等で燃焼させて発電を行い、その際に発生する熱を冷暖房や給湯等に利用するシステムです。
問18ヒートポンプを活用した機器として、最も不適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 82%
- ① エアコン
- ② エコキュート
- ③ 冷蔵庫
- ④ ヘアドライヤー
- ヒント
- ヒートポンプは低温側から高温側へ熱をくみ上げる装置で、冷凍冷蔵機器、エアコン、エコキュートなどで使われています。
- 答えと解説
-
答え: ④
ヒートポンプは、低温の熱源から熱を吸収し、高温の熱源を加熱する装置(熱をくみ上げる装置)です。ヒートポンプ技術は、エアコン・冷蔵庫(冷凍庫)などで活用されています。エコキュートは、ヒートポンプ技術を利用して空気の熱で湯を沸かすことができる電気給湯機で、冷媒として二酸化炭素を使用した機種の総称です。ヒートポンプ技術では、投入した電気エネルギーの約3〜6倍の熱エネルギーをつくりだすことができます。
なお、ヘアドライヤーは、電熱線で熱を発生させる機器で、ヒートポンプの技術を使った機器ではありません。
問19CO2回収貯留(CCS)の説明として、最も不適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 66%
- ① 京都議定書では、「土地利用、土地利用変化および林業分野(LULUCF)」もしくはCCSのいずれかを選択することになっている
- ② 火力発電所などの大規模の排出源から、CO2を分離・回収し、大気から隔離して貯留するものである
- ③ 貯留場所としては、地下もしくは海底下が考えられている
- ④ 我が国では実証試験が行われている
- ヒント
- CCSは火力発電所などで排出されるCO2を分離・回収し、地下や海底下に貯留する技術で、日本でも既に実証試験が行われています。
- 答えと解説
-
答え: ①
CO2回収貯留(Carbon capture and storage、CCS)は、火力発電所や製鉄所など大規模排出源から排出されるCO2を分離・回収して地下や海底下に貯留する技術です。2003〜2005年に新潟県長岡市で地中の帯水層に貯留する実証試験が行われ、その後はモニタリングが続けられています。また、2012年からは苫小牧沖(海底貯留)で実証実験が行われています。
なお、京都議定書で「土地利用、土地利用変化および林業分野(LULUCF)」もしくはCCSのいずれかを選択する仕組みとはなっていません。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集
地球温暖化の緩和策については、「『地球温暖化の将来予測と緩和策』 IPCC第3作業部会第5次評価報告書」でも紹介しています。