2014年7月号 [Vol.25 No.4] 通巻第284号 201407_284007

【最近の研究成果】 ライダーを用いた下部対流圏オゾンの観測と化学気候モデルとの比較

  • 地球環境研究センター 国環研GOSATプロジェクトオフィス 高度技能専門員 内野修
  • 地球環境研究センター 衛星観測研究室 主任研究員 森野勇

光化学オキシダントの主要な物質として人の健康や農作物などの成長に影響を及ぼす対流圏オゾンは、近年、東アジア地域において増加傾向にある。また対流圏オゾンは、メタンに匹敵する放射強制力を有する温室効果ガスである。我々は温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の赤外域のデータから算出される下部対流圏オゾンカラム量の検証のために対流圏オゾンライダーを開発し、佐賀大学で主にGOSATの通過時に観測を行っている。また、オゾンライダーの観測データと化学気候モデル(MRI-CCM2)との比較も行っている。

これまでの観測結果から、高度1–6kmのオゾンカラム量は春先から初夏にかけて濃度が高く秋から冬に低くなる季節変化を示すが、夏場はオゾン濃度の高い大陸性の空気とオゾン濃度の低い海洋性の空気の入れ替わりによる大きな変動を示すことが分かった。GOSATや化学気候モデルの結果もほぼ同様な変化を示している(図1)。

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図12012年佐賀でライダーを用いて観測された高度1–2kmと1–6kmのオゾンカラム量の時系列と化学気候モデル(MRI-CCM2)との比較

図2はライダーで観測された高度1–6kmのオゾン混合比の高度分布と化学気候モデルとの比較を行ったものである。高度2km付近に100ppbvを超えるような高濃度オゾンが観測されているが、モデルではこの高濃度オゾンを予測できておらず、さらなるモデルの改良が望まれる。今後、ライダーの連続観測により、高度2km付近の高濃度オゾンが昼間混合層に取り込まれ地上オゾン濃度を増加させる過程などについて調査を進めたいと考えている。

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図22012年ライダーで観測された佐賀上空のオゾン混合比の高度分布(黒色の線)と化学気候モデル(茶色の線)との比較。黒色の横棒はライダーの信号とノイズから計算された統計誤差を示し、茶色の横棒はライダー観測時間内のモデルの標準偏差を示す。オゾン混合比の単位はppbv(体積比で10億分の1)である

本研究の論文情報

DIAL measurement of lower tropospheric ozone over Saga (33.24°N, 130.29°E), Japan, and comparison with a chemistry-climate model
著者: Uchino O., Sakai T., Nagai T., Morino I., Maki T., Deushi M., Shibata K., Kajino M., Kawasaki T., Akaho T., Takubo S., Okumura H., Arai K., Nakazato M., Matsunaga T., Yokota T., Kawakami S., Kita K., Sasano Y.
掲載誌: Atmos. Meas. Tech., 7, 1385-1394, doi:10.5194/amt-7-1385-2014, 2014.

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