2014年7月号 [Vol.25 No.4] 通巻第284号 201407_284009

【最近の研究成果】 森林火災とミオンボ林地上部バイオマスの関係

  • 地球環境研究センター 物質循環モデリング・解析研究室 研究員 齊藤誠

サバナは疎林と草原が共優占にある植生帯であり、その樹冠面積は降水量と森林火災により決まる。アフリカ大陸南部に広く分布するミオンボ林[注]はサバナの一種に分類される植生であり、現地の人々の生活・経済は、農業、木炭生産、薪採取等、ミオンボ林の資源に強く依存している。一方で、人口増加に伴って過度の火入れ(1年から3年に一度の頻度)や伐採が行われており、ミオンボ林の分布面積や地上部バイオマス量は減少傾向にあることが報告されている。ミオンボ林の荒廃は現地の社会経済の痛手となるだけでなく、森林火災の頻発や植生帯の急激な遷移、水循環の変化に伴う乾燥化等が危惧されている。

本研究は、森林火災と地上部バイオマスに関するモザンビークでの現地調査データに基づき、陸域生態系モデルORCHIDEE-FMと火災モデルSPITFIREの結合モデルを作成し、ミオンボ林地上部バイオマスと森林火災及び気候変動の関係を明らかにした。その結果、(1) 森林火災の発生頻度もしくは火災強度の増加は地上部バイオマス及び樹高の低下を招くこと、(2) 草原バイオマスの増加は火災強度を高め、成熟林への成長の障害になること、(3) 現在の地上部バイオマスを維持するためには火入れの時期を乾季の始めに移し、火災を管理する必要があること、(4) 将来の大気CO2濃度及び気温の上昇は、ミオンボ林の炭素固定能力及び成長速度を高め、森林火災への抵抗力を高める可能性が高いこと、等がわかった。

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ミオンボ林における地上部バイオマス(AGB)、立木密度(SD)、火災後の苗木数(RM)、草原バイオマス(Grass)と火災強度(Ifire)、火災頻度(RIfire)、高濃度大気CO2及び気温上昇(CO2+T)の関係。黒色矢印は正の関係、灰色矢印は負の関係、破線は本研究におけるモデル推定の対象外を表す

脚注

  • Brachystegia属及びJulbernardia属の樹種が優占する植生帯

本研究の論文情報

Fire regimes and variability in aboveground woody biomass in miombo woodland
著者: Saito M., Luyssaert S., Poulter B., Williams M., Ciais P., Bellassen V., Ryan C. M., Yue C., Cadule P., Peylin P.
掲載誌: J. Geophys. Res. Biogeosci., 119, 1014-1029, doi:10.1002/2013JG002505, 2014.

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