2014年7月号 [Vol.25 No.4] 通巻第284号 201407_284004

附属書I国の京都議定書(第一約束期間)の達成状況 〜すべての締約国が達成に目途〜

  • 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 酒井広平
  • 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 小坂尚史
  • 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 楊川翠

温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)では、国連気候変動枠組条約事務局ウェブサイトで公開されている温室効果ガスインベントリのデータから各国の京都議定書目標値と達成状況をまとめ、GIOのウェブサイトで公表しています。今年は2012年までの各国データが国連に報告され、第一約束期間である2008〜2012年のデータがまとまりましたので、その状況について簡単に紹介します。昨年までは各国の温室効果ガス排出量のみをとりまとめていましたが、今年は第一約束期間のデータがまとまったということもあり、森林等吸収源と京都メカニズムクレジットを加味したデータも併せて掲載しています[1]

京都議定書第3条では、第一約束期間において、附属書I国(先進国および東欧・ロシアの市場経済移行国)全体で温室効果ガス排出量を1990年の水準より少なくとも5%削減すると定めています。各附属書I国は基準年比[2]の目標値を持っており、日本は−6%、ロシアは0%、欧州連合(15カ国[3])は−8%などと定められています。また、欧州連合の目標値は京都議定書第4条に従って再分配され、ドイツは−21%、英国は−12.5%、フランスは±0%などと割り当てられています。

第一約束期間の平均排出量(森林等吸収源・京都メカニズムクレジットを加味しない)を基準年と比較した場合(図1参照)、達成目標をクリアしている先進国(欧州連合15カ国に含まれる国は再分配後目標値)は、23カ国中11カ国となっています。欧州連合も共同で達成レベルにあります。市場経済移行国のロシアおよび東欧諸国(計13カ国)では、1990年代前半の経済崩壊の影響が大きく、ロシアをはじめとして排出量を大幅に減少させた国がほとんどとなっており、スロベニアを除く12カ国は森林等吸収源・京都メカニズムクレジットを加味しないで排出目標を達成しています。

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図1京都議定書目標値とその達成状況(2008〜2012年平均[森林等吸収源、京都メカニズムクレジットを含まない]) [クリックで拡大] *各国排出量の値は今後の審査等により改訂されることがある。

各国の排出量に森林等吸収源[4]・京都メカニズムクレジット[5]を加味すると(図2参照)、欧州連合(15カ国)以外のすべての国と欧州連合(15カ国)が目標を達成することになり、すなわち、京都議定書(第一約束期間)のすべての締約国が目標を達成することになります[6]

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図2京都議定書目標値とその達成状況(2008〜2012年平均[森林等吸収源、京都メカニズムクレジットを加味]) [クリックで拡大] *各国排出量、森林等吸収源の値は今後の審査等により改訂されることがある。また、京都メカニズムクレジットの値は、各国の2013年末時点のクレジット保有量を基に、一定の仮定を置いて試算しており、それ以降のクレジットの売買等により変更になる。

各国の2008〜2012年の排出量に影響を与えた要因をみると、2008年、2009年は多くの国において、世界金融危機による急激な景気後退の影響で、2年連続で排出量が前年比で減少しました。また、2010年はその後の景気回復で排出量増加している国が多くみられました。

2011年、2012年は各国の事情によりさまざまでした。欧州連合に関しては、2011年に欧州の冬が温暖であったこと、2012年に欧州債務危機の影響があったことなどで、排出量が2年連続で減少しました。オーストラリアやニュージーランドに関しては、穏やかな気候が続いたこと等により農業生産活動が活発になり、排出量が2年連続で増加しました。

また、参考情報ですが、京都議定書を批准していないアメリカは、世界金融危機の影響(2008〜2009年)や石炭火力発電から天然ガス火力発電へのシフトなどから2007年をピークに排出量が減少しています。

データの詳細に関しては、GIOウェブサイト「附属書I国の温室効果ガス排出量と京都議定書達成状況」(http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html)で公表していますので、そちらをご参照ください。

なお、日本の達成状況についての詳細は、地球環境研究センターニュース2014年6月号の「わが国の2012年度(平成24年度)の温室効果ガス排出量について 〜第一約束期間の排出吸収量出揃う。マイナス6%の目標を達成〜」を参照ください。

脚注

  1. 各国排出量、森林等吸収源の値は今後の審査等により改訂されることがある。また、京都メカニズムクレジットの値は、各国の2013年末時点のクレジット保有量を基に、一定の仮定を置いて試算しており、それ以降のクレジットの売買等により変更になる。
  2. 京都議定書基準年はCO2、CH4、N2Oについては1990年、HFCs、PFCs、SF6については1990年または1995年を選択することができる。なお、一部の市場経済移行国については1990年以外の特定の基準年を用いることができる。
  3. 2014年6月現在の欧州連合加盟国は28カ国だが、第一約束期間では京都議定書採択時(1997年)に加盟していた15カ国が対象となる。
  4. 京都議定書3条3および4で定められている吸収源活動。3条3の必須項目の新規植林、再植林、森林減少、3条4の選択項目の森林経営、農地管理、放牧地管理、植生回復が含まれる。
  5. クリーン開発メカニズム(CDM)および共同実施(JI)、国際排出量取引で獲得・譲渡したクレジットが含まれる。
  6. オーストリア、ベルギー、イタリア、ルクセンブルグは現時点で単独達成をしていない。しかし、これらの国が属する欧州連合(15カ国)が目標を達成しているため、これら4カ国も達成したとみなされる。

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