2011年11月号 [Vol.22 No.8] 通巻第252号 201111_252002
地球環境豆知識 19 国の温室効果ガス排出量算定のためのIPCCガイドライン(IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories)
国の温室効果ガスの排出・吸収量算定にあたっては、正確でまた各国間で不公平が生じないような世界的な基準づくりが望ましい。このため政策的に中立な立場で国連気候変動枠組条約に技術的な情報を提供する役目を担っている気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)は、算定方法の手引書として1995年に初めてガイドラインを策定し、翌1996年に一部を改訂して「1996年改訂IPCCガイドライン」とした。このガイドラインを補完する手引書として2000年に「グッドプラクティスガイダンス(GPG)」を追加し、さらに2003年には土地利用、土地利用変化及び林業(Land Use, Land-Use Change, and Forestry: LULUCF)分野の手引書である「GPG-LULUCF」を追加し、現在はこれら三つのガイドラインが国連気候変動枠組条約および京都議定書附属書Ⅰ締約国のインベントリ作成の基準となっている。
その後、時の流れとともに1996年改訂ガイドラインの更新が必要とされ、2006年に上記三つのガイドラインを統合・精緻化した「2006年IPCCガイドライン」が策定された。主な変更点は、「エネルギー」と「廃棄物」の両分野はそのままだが、「工業プロセス」と「溶剤その他の製品の利用」の分野および「農業」と「LULUCF」分野がそれぞれ統合されたことと、対象ガスが従来の二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)に加えて三フッ化窒素(NF3)、新規温室効果ガス(SF5CF3)等が新たに記載されていること等である。このガイドラインは京都議定書第一約束期間後の排出量算定の基準としていずれ位置づけられる予定である。なお、昨年から今年にかけて国別報告書を提出した非附属書Ⅰ締約国(概ね途上国に相当)の一部では既にこのガイドラインが用いられている。