2018年10月号 [Vol.29 No.7] 通巻第334号 201810_334005

観測現場発季節のたより 15 フラスコサンプリングを富士山頂で始めました。—夏の終わりの冬支度—

  • 地球環境研究センター 炭素循環研究室 高度技能専門員 野村渉平

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国立環境研究所は富士山特別地域気象観測所に大気中二酸化炭素(CO2)濃度を連続観測する機器を2009年に設置し、富士山頂の大気中CO2濃度を測定しています。この観測により富士山頂のCO2濃度は東アジア上空の代表的なベースラインとなる濃度と同じ傾向を示す「バックグラウンド濃度」であることが示唆されました。

CO2以外の温室効果ガス(CH4やN2Oなど)についても様々な方法で連続観測の可能性を検討しましたが、観測所への商用電源が7–8月以外供給されない条件下では実施が困難と判明したため、富士山頂の大気を定期的にフラスコに採取し、それを研究所の実験室に持ち帰って温室効果ガス濃度およびCO2同位体比を測定する「フラスコサンプリング」を新たに実施することとしました。

観測所は7–8月の山開き期間以外は閉所してしまうため、夏期に12本のフラスコと大気自動採取装置をあらかじめ観測所に設置し、毎月一度の頻度でフラスコに山頂大気を自動採取し、翌年の夏期に12本のフラスコを回収することにしました。2018年7月に初めてフラスコを回収し、2017年7月から2018年6月に採取した大気の温室効果ガスの濃度を測定した結果、CO2と同様に富士山頂大気中の他の温室効果ガスの濃度も東アジア域のバックグラウンド濃度であることが示唆されました。

2018年8月21日に再びフラスコを観測所に設置してきました。この12本のフラスコに採取される大気の計測で得られるデータが、将来の温室効果ガスについての議論に参考となると信じています。

写真1CO2計そばに設置したフラスコサンプリング装置の様子(遠嶋室長と野村高度技能専門員)

写真2富士山頂の大気を採取するフラスコ

写真3富士山下山時の富士山の様子

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