2017年7月号 [Vol.28 No.4] 通巻第319号 201707_319007

国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました 2 パネル・展示 2:永久凍土からメタン!? 巨大永久凍土が解けている

  • 国立環境研究所 地球環境研究センター 横畠徳太
  • 国立環境研究所 地球環境研究センター 伊藤昭彦
  • 国立環境研究所 地球環境研究センター 高田久美子
  • 海洋研究開発機構 統合的気候変動予測研究分野 斉藤和之

2017年4月22日(土)に、科学技術週間に伴う国立環境研究所一般公開として「春の環境講座」を開催しました。当日は、時折小雨がぱらつくあいにくのお天気にもかかわらず、576名もの方々にお越しいただきました。

地球環境研究センターは、地球温暖化研究棟1階を公開し、「ココが知りたい地球温暖化の適応策」と題したパネルディスカッションを行うとともに、地球環境観測の展示・紹介、発電量表示システムを備えた自転車発電体験を行いました。地球温暖化研究棟での公開内容についてご報告します。

緯度や標高の高い寒冷な地域では、一年を通して地面の中の氷が解けない「永久凍土」が広く分布しています。永久凍土は氷河時代からずっと凍りついているため、メタンや二酸化炭素などの温室効果ガスや有機物が、たくさん含まれています。近年、地球温暖化によって、非常に巨大な氷塊を含む永久凍土(「エドマ層」と呼ばれます)が、次々に解けていることが観測されています。そこで環境研究総合推進費課題(2-1605)「永久凍土大規模融解による温室効果ガス放出量の現状評価と将来予測」(http://www.jamstec.go.jp/iccp/j/pfch4/)では、アラスカやシベリアのエドマ層の大規模融解の現状と将来予測を行う研究を実施しています。私たちは国立環境研究所の科学技術週間に伴う一般公開「春の環境講座」で、研究プロジェクトの概要とこれまでの成果を、現地での写真や映像を交えて紹介しました。また「実際に測ってみよう」と題して、現場の観測で使われる土壌水分計などを使って、来場者に観測の体験を楽しんでいただきました。展示には小学校低学年から中高生、シニアな方まで多くの方が訪れ、たくさんのご質問やさまざまなご意見をいただき、対応した私たちにとっても非常にいい経験になりました。この場を借りて、お礼申し上げます。

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写真1展示では、土に水をやり、土壌水分計で土の中の水分の割合を測定するなど、観測の体験を楽しんでいただきました。現地での映像を交え、研究内容についてお話をさせていただきました

解けている巨大永久凍土

エドマ層の写真を図1に示します。研究者の大きさから、いかに巨大な凍土であるかがわかります。エドマ層の存在は以前から知られていましたが、近年、急激に解けていることが注目されています。凍土の融解の様子を示したのが図2です。多角形土と呼ばれる網目状の地形では、網目の部分の地下に地下氷が存在しています。その氷が融解すると体積を失って陥没し、網目の線に沿って水がたまり、湖や池ができます(サーモカルスト湖)。

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図1エドマ層の写真。図2の写真「アラスカ北部の川岸に現れた崖」を、近くから見たところ

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図2エドマ層融解の現状。ポリゴン(多角形土)と呼ばれる網目状の地形では、網目の部分の地下に地下氷が存在しています。その氷が融解すると体積を失って陥没し、網目の線に沿って水がたまり、「サーモカルスト湖」ができます

温室効果ガス放出の現状評価と予測

私たちの研究プロジェクトでは、国内外の研究機関が協力して、エドマ層の融解が地球環境に与える影響について調べています。アラスカやシベリアで測量調査などをすることで、地盤沈下の進行速度と凍土の融解速度を推定します(アラスカ大学・海洋研究開発機構)。また、現地で凍土中の氷を採取して日本に持ち帰り、凍土中の温室効果ガス濃度や有機物の量などの測定を行っています(北見工業大学)。さらに、これらの情報を利用して、エドマ層の生成と温暖化に伴う融解を予測するモデルの構築や、凍土の融解によって放出される温室効果ガス量の推定を行っています(海洋研究開発機構・国立環境研究所)。現地での様子や最新の成果などは、ウェブサイト http://www.jamstec.go.jp/iccp/j/pfch4/ にありますので、興味を持っていただいた方は、ぜひご覧ください。

*図中の写真は、大野浩氏(北見工業大学)、岩花剛氏(アラスカ大学)からも提供していただきました。

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地球環境研究センター ニュース編集局
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