2012年2月号 [Vol.22 No.11] 通巻第255号 201202_255002

気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)および京都議定書第7回締約国会合(CMP7)報告 2 政府代表団メンバーからの報告:REDD+の交渉結果

社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 特別研究員 森田香菜子

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)報告 一覧ページへ

1. COP17におけるREDD+に関する議題

「途上国における森林減少・森林劣化からの排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動(以下、REDD+)」は、2013年以降の気候変動対策に関する制度枠組の中で、先進国と途上国双方に利点のある対策として注目されている。これまでREDD+に関する制度・政策面はAWG-LCAで、技術面はSBSTAの下で議論されてきたが、まだREDD+の国際制度は整備されていない。

COP17においては、COP16で採択されたカンクン合意に記されている以下のREDD+に関する検討課題が議論された。REDD+の制度・政策面を検討するAWG-LCAの下で求められていたのは、REDD+の完全実施のための資金オプションを探ること、その報告をCOP17で行うことである。一方、REDD+に関する技術面の検討を行うSBSTAの下で求められていたのは、クレジット算定の基準となる森林参照排出レベル(REL)/参照レベル(RL)やREDD+活動の国家森林モニタリングシステムに関する様式、セーフガード(REDD+実施における負の影響軽減)に関する情報提供システムのガイダンス、森林関連の排出量に関する測定・報告・検証の様式などをCOP17で検討することである。

2. COP17におけるREDD+関連の合意事項

(1) AWG-LCA(REDD+実施のための資金オプション)の決定

REDD+実施のための資金オプションに関しては、「新規で、追加的、予測可能な、途上国へ提供されるREDD+に関する資金が多様な資金源(代替資金を含む公的・民間、二国間・多国間資金)から拠出される可能性」や「REDD+を支援するマーケットベース・非マーケットベースアプローチの発展の可能性」などが示されたのみであった。REDD+支援に必要な資金源やREDD+実施におけるマーケットベースアプローチやオフセットの利用など、REDD+の資金オプションに関する各国の主張の違いがこの結果を生み出したと考えられる。

締約国・オブザーバーのREDD+の資金オプションに関する意見提出、テクニカルペーパーの作成、ワークショップの開催などを通じて、引き続きAWG-LCAの下でREDD+の資金に関して検討していくことが決定された。

(2) SBSTA(REDD+の技術面)の決定

SBSTAにおいては、REDD+実施のためのセーフガードに関する情報提供システムのガイダンス、森林REL/RLのための様式、これらを今後具体化するための課題が示された。

セーフガードに関する情報提供システムについては、国内事情・能力などを考慮したものであること、REDD+を実施している途上国はセーフガードに関する情報の要旨を定期的に提供することなどに合意した。情報の具体的な種類、情報の提出時期・頻度など具体的な情報提供プロセスに関しては今後検討していくことになった。

森林REL/RLのための様式に関しては、締約国による森林REL/RL開発に関する情報や論理的根拠の提出、途上国による森林REL/RLの定期的な更新や森林REL/RL案の提出などに合意した。国内事情を考慮した森林REL/RLの策定方法、森林REL/RL案の技術評価プロセスなど具体的な手法に関しては今後検討することが決定された。

カンクン合意における課題であったREDD+活動の国家森林モニタリングシステムや森林関連の排出量に関する測定・報告・検証の様式などについてはCOP17でほとんど議論されず、今後検討していくことになる。

3. 今後の展望

COP17において、REDD+実施のための資金供与面、セーフガードや森林REL/RLの技術面に関して、カンクン合意実施に向けた大まかな方向性は示された。しかし、COP17におけるREDD+に関する合意文書は、カンクン合意の内容を再確認している部分も多く、あまり大きな進展は見られなかった。

UNFCCCの外では、すでにさまざまな途上国でREDD+のパイロットプロジェクトが実施されているが、REDD+推進のための国際制度構築には、まだ多くの時間を要すると予想される。REDD+実施を推進する上で不可欠な資金供与面に関しては、REDD+を支援する資金源だけでなく、資金配分方法、さらにはAWG-LCAにおける気候変動対策支援の資金全般の議論との整合性など検討すべき課題は多い。技術面に関してもCOP17におけるセーフガードや森林REL/RLに加え、森林減少・劣化に結び付く活動の特定、REDD+活動を評価する測定・報告・検証システムの構築などさまざまな検討課題が残されている。REDD+の制度・政策面、技術面の具体的な議論を進めるためには、すでに実施されているREDD+パイロットプロジェクトからの経験・情報の活用が重要となると考えられる。

photo. Forest Day

毎年開かれているForest Day(REDD+に関するサイドイベント)

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