地球温暖化研究プログラム

プロジェクト2地球温暖化に関わる地球規模リスクに関する研究

平成23年度の研究成果

気候変化影響に関する不確実性を理解するための取組みの一つとして、気候変化予測の不確実性を考慮した作物収量変化の予測を行いました。成果の一例として、以下では全球規模でのトウモロコシ収量の変化予測の結果を示しています。影響予測に含まれる不確実性の要素として、将来の温室効果ガス排出の見通しや気候モデルの選択を扱い、各要素による不確実性の幅を定量的に見積もり比較しました。その結果、現時点で利用可能な気候モデル群からどの気候モデルを選ぶかによって生ずる不確実性の幅は、将来の温室効果ガス排出の見通しにより生ずる不確実性幅に比類するものであり、対策検討に際して無視することが出来ないことがあらためて示されました。今後、社会経済的側面を考慮しつつ、より現実かつ身近な問題として実感できるように影響の見通しの示し方・伝え方を工夫し、温暖化対策に関する意思決定に資する情報の提供をめざします。

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図は作物生産性モデルGAEZにCMIP3気候シナリオを入力して計算した世界トウモロコシ生産量上位13カ国平均の生産性変化率(対1990年代比)を排出シナリオ別に示したグラフである。予測されるトウモロコシの生産性変化には気候モデルの違いによる予測の不確実性幅があり、特に2080s(2080年代)のA2シナリオで約62%の最も大きい不確実性幅を示した。

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図は各CMIP3気候シナリオから算出されたトウモロコシ生産性変化率を排出シナリオ別に平均したグラフである。排出シナリオの違いにより予測の不確実性があり、時間の経過とともにその幅は大きくなり2080sには約11.6%になると予測された。

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図は研究で扱った全気候シナリオの中で13の主要トウモロコシ生産国の生産性平均が最も高く予測された2050年代のSRES A2シナリオを想定したCGCM3.1(T47)モデルと最も低く予測された2080年代のSRES A2シナリオを想定したGFDL-CM2.0モデルによるトウモロコシ生産性変化の空間分布である。地域的に見た場合、シミュレーション期間と排出シナリオが同じであっても気候モデルの違いによって収量予測結果の符号すら違いうることがわかる。

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図はトウモロコシ生産性の気温・降水量変化に対する感度分析結果を国別に示すとともに、SRES A1Bシナリオでの気候モデル別気温・降水量変化を記号でプロットしたものである。アメリカの場合、気温の変化より降水量の変化にトウモロコシ生産性の感度が高く、インドの場合、降水量の変化より気温の変化に感度が高いことがわかる。また、ロシアでは気温と降水量の双方に感度が高く、特に気温と降水がともに増加するとトウモロコシの生産性が急増すると予測している。