COLUMN2023年12月号 Vol. 34 No. 9(通巻397号)

観測現場発 季節のたより[26] 犬見た星を私も見たい (5)トマトときゅうりのサラダ

  • 笹川基樹(地球環境研究センター大気・海洋モニタリング推進室 主幹研究員)

西シベリアでは数カ所の鉄塔で温室効果ガスの現場観測を行なっている。共同研究者の所属する、ロシア科学アカデミー大気光学研究所のあるトムスク市を拠点として、各鉄塔までメンテナンスに出かけることとなる。今回はトムスク市から2番目に“近い”鉄塔のあるカラシボエが現場である。直線距離でも約250km。東京からだと名古屋あたりの距離になるが、東名高速ならぬトムカラ高速はなく、一部は舗装もされていない行程である。片道4時間以上かかり、昼食は(夕食も)ドライブインでとる。

ランチ(写真1)
〇トマトときゅうりのサラダ(スメタナと香菜がのっていて食塩をかけて食べる)
〇カツレツライス
サリャンカ
〇パン
〇ベリージュース

「犬が星見た」に何度か登場する、薄くスライスされたトマトときゅうりのサラダがツボにハマった。考えれば、日本で普段食べるものにも半世紀以上前から変わらないものはいくらでもあるので、おかしくはないのだが。

[解説] 今回で本シリーズ5回目の季節のたよりですが、「タイトルの意味は何?」と編集部と(私の知る唯一の)読者の方から質問をいただきました。武田百合子先生の「新版 犬が星見た ロシア旅行」をオマージュしたタイトルでした。この作品は、武田先生が昭和44年にソ連を旅行した時の日記をベースにした旅行記です。半世紀以上昔の、しかもソ連時代の旅行記であるにもかかわらず、共感できる部分が随所にあり、シベリア出張中に読みながら追体験できたのは思わぬ楽しみでした。

ちなみにロシアのビールに関しては、「飲まなくても飲んでも同じようなビール」とのこと。先輩研究者がショ●●●ビールと呼んでいたのに通じるものがあります(コクがなくてあまり冷えていない)。今回の「トマトときゅうりのサラダ」は作品中に何度か出てきて、あまりにそのままだったので、この一品でタイトルの種明かしすることを決めていました。本シリーズはこれで終わりになります。一部でも読んでくださった方、ありがとうございました。

写真1 ドライブインでの昼食(写真提供: 成田正司氏)。向かい側は、共同研究者のデニスさん(左)とミーシャさん(右)。
写真1 ドライブインでの昼食(写真提供: 成田正司氏)。向かい側は、共同研究者のデニスさん(左)とミーシャさん(右)。
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