2018年6月号 [Vol.29 No.3] 通巻第330号 201806_330001
就任のご挨拶
地球環境研究センターは1990年に発足し、成層圏オゾンや地球温暖化、酸性雨、生物多様性といった地球環境の幅広い領域をカバーする部署として活動を開始しました。その後、国立環境研究所全体で、国境を越える広域の環境問題に取り組む必要性が高まり、広域大気汚染や生物多様性に対応する研究はそれぞれの専門部署が進めることになりました。地球環境研究センターは、特に2001年以降、地球温暖化に関わる諸問題の現象解明や、低炭素社会(二酸化炭素の排出の少ない社会)をつくるための問題解決型の研究などを重点的に推進しています。
地球環境研究センターの強みの一つは、1990年代に開始した地上・船舶・航空機による観測、そして2009年からは温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測(現在、衛星観測センターが実施)に基づき、温室効果ガスに関わる地球規模での観測を長期にわたり実施していることです。また、もう一つの強みは、社会のニーズの変化に応え、基盤的研究から応用研究まで、柔軟かつ多方面に研究を発展させることのできる人材が集まっていることです。これまでにも、観測に基づく地球環境変化の検出から、数値計算モデルを用いた気候変動影響・リスクの評価へ、研究分野を学際的に拡げてきました。これからは、温室効果ガスの排出を抑制する「緩和策」や、気候変動が社会に与える負の影響を軽減する「適応策」の策定に必要な科学的知見も充実させていきます。
2016年に発効したパリ協定により、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2°Cより十分低く保つとともに1.5°Cに抑える努力を追求すること、そのために、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収をバランスさせるという目標が掲げられました。この緊急かつ大きな目標に対し、さまざまな対策が地球規模でどれだけの効果を発揮しているか、地球環境を持続可能な範囲で維持するには、あとどれだけの努力が必要かといった問いに対して、最新の科学的知見をもって応えることで貢献していきたいと思います。
今後とも、皆様のご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。