2018年2月号 [Vol.28 No.11] 通巻第326号 201802_326004

池田市クールチョイス環境セミナー「2050年の天気予報」参加報告

  • 地球環境研究センター 交流推進係 広兼克憲

1. はじめに

2017年11月4日(土)大阪府池田市において「池田市クールチョイス環境セミナー」が開催され、一般市民など90名の参加者がありました。その第一部では気象予報士の井田寛子さんと当研究所の江守正多気候変動リスク評価研究室長が「2050年の天気予報」をテーマにトークショーを行いました。実はこのトークショーは2016年5月に地球環境研究センターが企画・実施したものと同じコンセプトに基づいています(http://www.cger.nies.go.jp/ja/news/2016/160511.html)。私もこれに参加させていただきましたので、その結果をご報告させていただきます。

2. 科学者と気象予報士のトークショー

冒頭、2014年にNHKで制作された井田気象予報士と江守室長による約5分間のビデオが上映されました。

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写真1冒頭に井田気象予報士、江守室長の2名が出演したNHK制作の「2050年の天気予報」を上映

これは世界気象機関(WMO)が、国連気候変動サミット(2014年9月開催)に向け、各国に対し「2050年の天気予報」の制作を要請したことによりできたものです。ビデオでは、2050年9月時点では気候変動により猛暑日や真夏日が増え、熱中症による死者が50年前(2000年)から倍増したことからはじまり、日本の代表的風景であった秋の紅葉が、2050年はクリスマス付近になりそうだと予報しています。さらにスーパー台風上陸により大都市に壊滅的な被害が出る可能性やこれまでにない高潮リスクをリアルに予報しています。

改めてこのビデオを見ると、2016年につくば市で上映したときよりもさらに内容が現実味を帯びてきている気がしました。現に、2017年は九州北部の豪雨災害からはじまり史上最大規模の台風の上陸など空前の激しい気象現象が日本を襲ったからです。なお、このビデオはYouTubeなどの動画サイトで「2050年天気予報」と検索することによりご覧いただけます。

上映後はビデオに出演した2人が、実際に会場の皆様に語りかけました。井田気象予報士はビデオを踏まえ、既に地球温暖化に伴う異常気象は発生しており、2017年の九州北部の豪雨災害、2015年の関東・東北豪雨での常総市の水害等がこれまでにないような激しい雨の結果によるものであること、2016年は東北の太平洋側に昭和26年の統計開始以来「初めて」台風が上陸したことなどを説明しました。その上で、「大阪市のこれまでの最高気温記録は次のどれでしょう?」のようなクイズを出題し、具体的なイメージを共有できるように導いてくださいました。

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写真2井田気象予報士は会場に向けて3択のクイズ(熱中症の死亡者数は?)で問いかけました

江守室長はパリ協定の目標を達成するため、すなわち地球温暖化の影響を最小限に食い止めるためには、今世紀中に温室効果ガスの世界の排出を実質的にゼロにしなければならないことを説明しました。そしてそれを達成するためには、CO2を出さないエネルギーを使えば良いのであって、エネルギーを使わないことが求められているのではないと補足し、実際、最近3年間は経済成長が続いているにも関わらず、これまで一貫して上昇してきた世界のCO2排出量が増えていないというデータも示しました。これは再生可能エネルギーの普及を示唆するもので、このような対策をどう進めていくかが課題であるとしました。そして2050年に社会や環境がどのようになっているか、エネルギーがどうなっているのか、想像してみてほしいと会場に問いかけました。

3. パネルディスカッション

その後、倉田薫池田市長と「森のようちえん」代表の山口真由さん、そして関西大学の2名の学生さんが加わりパネルディスカッションが行われました。池田市では、3R推進の観点から設置されたエコミュージアムでのリユースショップ・リサイクルステーションの運営によって得たお金で太陽光発電施設を市内各地(4箇所)に導入した例が市長から紹介されました。市長は環境問題がすべての教育教科にまたがっていることから、さらに防災と環境、英語と環境を結びつけた環境教育を充実していきたいと述べました。続いて、「森のようちえん」代表の山口真由さんからは、デンマークで1950年頃から始まった、子どもを自然豊かな環境で育てようという理念をこの緑豊かな池田市でも実現するため、子どもたちが四季を感じながら暮らしや生活の知恵を伝承する活動が紹介されました。江守室長から「こういう環境で育つとどう違うのか」と質問があり、「子どもたち(3–5歳)は枝など自然物を使って遊ぶのが上手になり、創作活動に熱心で、自然に関して敏感です」との回答がありました。まもなく母親になられる井田さんからは「いいなと思う。小さい時に自然に触れることは大切。都心で子どもを育てる場合にはどうしたら良いのか」と質問があり、「便利なものは享受しながらやっていきたい。都会でも空を見たり、木を見たりして様々なことにお互い気づくことが大事なのでは」とのアドバイスがありました。そして、市長からは「井田さんには、ビル群の中ではなく、ぜひ自然豊かな池田市でお子さんを育ててほしい(笑)」とコメントがありました。

江守室長からこのような環境問題に関する対話の重要性に関連して、研究所が2016年に設置した「社会対話・協働推進オフィス」や新しく始めたSNSについても紹介がありました。

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写真3江守室長からは「研究所でもSNSを(いまごろ)はじめました」と、環境問題における対話の重要性をアピールしました

4. メッセージ

アットホームな雰囲気の中で、あっという間に時間が過ぎました。井田気象予報士から、自分は人に伝えるという仕事をしているから感じるが、このような話の内容はここだけで終わるのではなく、是非、家に帰って家族と話すとか、より多くの人に伝えてほしいと訴えました。江守室長からは、環境問題を考えるとき、人と協力することの重要性、いろいろな意見の人と話し合って答えを見つけようとすることも考えてほしいと述べました。

最後に2人はクールチョイス宣言としてフリップでメッセージを会場に示しました。

  • 自然を増やし、災害を減らす(井田気象予報士)
  • エネルギーのチョイス、社会のチョイス(江守室長)
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写真4, 5最後に井田気象予報士と江守室長らパネラーから会場へメッセージが発信されました

私たち環境問題の広報にかかわるものとして、世の中で起きていることに無関心にならず、みんなと話し合い、エネルギーも含めて「適切に選択」していくことなどにより、気候変動の影響も回避し、持続可能な社会を形成していけるのではと強く感じました。

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