2015年2月号 [Vol.25 No.11] 通巻第291号 201502_291008

平成26年度スーパーコンピュータ利用研究報告会を開催しました

  • 地球環境研究センター 研究支援係

地球環境研究センター(以下、センター)は、12月24日(水)に国立環境研究所(以下、研究所)交流会議室で平成26年度スーパーコンピュータ利用研究報告会(以下、報告会)を開催した。研究所は、将来の気候変動予測や炭素循環モデル等の研究開発や膨大なデータを扱う衛星データ解析、その他の基礎研究などを支援する目的で、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)を所内に整備・運用し、所内外の環境研究者に計算資源を提供し、スパコンでしか実現できないような研究成果を生み出してきた。

研究所は、スパコンの利用・運用方針などを審議する「スーパーコンピュータ研究利用専門委員会」(以下、専門委員会)を設置し、所内外のスパコン利用希望ユーザーから申請された研究課題について、専門委員会の意見を踏まえて、スパコン研究利用の可否を判定している。利用が認められたユーザーには、年に一度の報告会(当報告会)で報告が求められる。

報告会は、毎年、所内及び所外利用の課題代表者(又はその代理)によって行われる。今回は、所内11、所外6課題、合計17の研究課題について、平成25年度の研究成果および平成26年度の中間結果についての報告が行われ、最新の研究成果および今後の展望と利用、さらに研究におけるスパコンの重要性が述べられた。

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写真発表者と審査者を含め、所内外から合わせて約60名の参加があった

報告された内容としては、地球環境をコンピュータ内で仮想的にモデル化し(コンピュータモデルについては地球環境豆知識参照)、気候変動メカニズムの理解を進める複数の研究成果、オゾン層や広域的な大気汚染のメカニズム理解又は将来予測、原子力発電所事故による放射性物質の環境中での拡散シミュレーション、人工衛星データを解析して地上からの温室効果ガス排出を推定する試み、さらには希少野生生物のゲノム解析、そして火星におけるダスト循環のシミュレーション等々、多岐にわたる。今年度は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」が取得した膨大なデータを解析する研究課題が複数報告され、衛星データ解析の分野でのスパコン利用の重要性を認識させられた。

さらに、来年度から当研究所のスパコンがスペックアップされるため、より詳細で信頼度の高い計算が期待できると表明する研究課題もあった。これら報告に続く討論では、専門委員会委員のみならず関係研究者からも活発に質問があり、さまざまな立場からの多くの貴重な意見により、スパコン利用をさらに発展させ、環境研究を進める機会とすることができた。その一方で、多元連立方程式を解く計算が得意なベクトル型のスパコンではなく、今後は汎用型のスパコンで研究を進める課題もあり、スパコンの使い分けも進んできたと感じられた。

当日報告された内容の詳細については、センターのウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/index.html)を参照されたい。上記サイトには、過去の報告会における発表内容に関する情報が掲載されている(平成26年度分も近日中に掲載予定。ただしすべての情報ではない)。

前述のとおり研究所のスパコンシステムは来年度に更新され、新しいベクトルマシンが導入される。計算速度等のスペックは世界トップレベルのシステムではないが、時世に合わせて大幅なスペックアップが行われるために、さらなる研究成果の充実が期待される。今後も、手厚いサポートと安心して利用できる研究用スパコンシステムをめざし、ノウハウのさらなる蓄積を進めている。環境研究の発展に、これからも研究所スパコンシステムが利用され、大きな成果を上げることを願ってやまない。

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スーパーコンビュータ利用研究報告会に関する過去の記事は以下からご覧いただけます。

目次:2015年2月号 [Vol.25 No.11] 通巻第291号

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