2014年11月号 [Vol.25 No.8] 通巻第288号 201411_288009

酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 11 途上国の責任と支援 —3R・低炭素社会検定より—

  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 一覧ページへ

3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】

検定試験問題から出題します。

問30気候変動枠組条約の「共通だが差異ある責任」の原則について、最も不適切なものはどれか?

初級レベル

正答率 85%

  • 先進国と途上国では課せられる報告や義務が異なる
  • 先進国は資金や技術面で途上国を支援する義務を負っている
  • 京都議定書は先進国により重い負担を課している
  • 国別報告書の提出は先進国のみに課せられる義務である
ヒント
気候変動枠組条約のすべて締約国(途上国を含む)は国別報告書を提出する義務があります。
答えと解説

答え: ④

気候変動枠組条約は「共通だが差異のある責任」の原則に基づいて、締約国に対して様々な義務を課しています。定期的な温室効果ガス排出量・吸収量インベントリの作成・公表や、条約の実施状況に関する報告書(国別報告書)の作成・公表は全ての締約国に課せられる一方で、附属書I国(先進国や市場経済移行国(ロシアや一部の中東欧諸国))には、毎年の温室効果ガス排出量・吸収量インベントリの作成・報告など、非附属書I国(附属書I国以外の締約国)よりも多くの義務が課せられています。さらに、附属書II国(附属書I国から市場経済移行国を除いた国・地域)には、附属書Ⅰ締約国の義務に加えて、開発途上国による条約の実施を資金面や技術面で支援する義務が課せられています。

問31気候変動問題のコベネフィット・アプローチに関する説明として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 75%

  • 途上国の経済発展にも気候変動対策にも便益をもたらす取組を推進しようという考え方である
  • 京都議定書(第一約束期間)ではこのようなアプローチはとられなかった
  • 「効率のよい交通システムの導入」は温室効果ガス排出量の削減と交通混雑の解消や利便性の向上という便益がある
  • 「廃棄物の埋立処分方法の改善」は埋立地のCH4排出を削減するとともに、環境保全(汚水発生抑制、悪臭防止など)の便益がある
ヒント
京都メカニズムに含まれるCDM(クリーン開発メカニズム)もコベネフィットを狙った仕組みになります。
答えと解説

答え: ②

コベネフィット・アプローチとは、地球規模の課題である気候変動対策の便益(ベネフィット)と、開発途上国自身の課題である経済発展などの便益を同時にもたらす取り組みを推進しようという考え方で、途上国にとって重要な概念となります。京都メカニズムに含まれているCDM(クリーン開発メカニズム)は、途上国における「開発ニーズ」と「気候変動対策ニーズ」の両立を狙ったメカニズムであり、コベネフィット・アプローチということができます。

コベネフィット・アプローチの具体例が選択肢③、④の例であり、「効率のよい交通システムの導入」は温室効果ガス排出量の削減と交通混雑の解消や利便性の向上という便益があります。また、「廃棄物の埋立処分方法の改善」は埋立地のCH4排出を削減するとともに、環境保全(汚水発生抑制、悪臭防止など)の便益があります。

問322010年末現在で、国連気候変動枠組条約の非附属書I国に含まれる国の組み合わせとして、最も適切なものはどれか?

上級レベル

正答率 50%

  • 韓国、中国、インド
  • 中国、インド、ロシア
  • アメリカ、ブラジル、アルゼンチン
  • ブラジル、スペイン、ポルトガル
ヒント
1990年時点でOECD加盟国(いわゆる先進国)ではなかった日本の隣国は附属書I国には含まれていません。
答えと解説

答え: ①

国連気候変動枠組条約の条文の最後に、Annex I(附属書I)という別添があり、そこには先進国諸国の国名が並んでおります。附属書Iに列挙されている国は、温室効果ガス排出の削減努力や、途上国に対する予算支援などが求められ国になります。それゆえ、先進国全体を指す言葉として附属書I国(Annex I Parties)といい、その附属書Iに掲載されていない国々つまり途上国のことを非附属書I国(Non Annex I Parties)といいます。附属書Iには東欧諸国やロシアを含む先進国がアルファベット順に記載されております。中国、韓国、インド、ブラジル、アルゼンチンは非附属書I国です。

  • *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
  • 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。

TOP