2014年2月号 [Vol.24 No.11] 通巻第279号 201402_279012

【最近の研究成果】 新しいシナリオフレームワークを用いた飢餓リスクに対する温暖化影響と適応策の研究

  • 社会環境システム研究センター 統合評価モデリング研究室 JSPSフェロー 長谷川知子

農業は気候変化に対して敏感であり、温暖化により直接的な影響を受けると懸念されている。国際的に新しく開発が進められているシナリオフレームワークを用いて、全世界における温暖化による飢餓リスクへの影響と適応策の効果について解析した。新シナリオフレームワークは2つの要素、すなわち、社会経済条件(SSPsと呼ばれる5つの共通社会経済シナリオ、うち3つを本研究で用いた)と気候条件(RCPsと呼ばれる4つの代表濃度パス)から成り、多様な将来の社会を想定することができる。さらに、結果に相違をもたらす要因の一つである気候モデルとして、第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)に参加した8つの気候モデルによる最新の気候データを用いた。農業における適応策として作物品種の変更、植付日の変更を想定した。

解析から次の3点が明らかとなった。第一に、上の2種類の適応策は、将来の社会経済条件、気候条件に関らず、温暖化によりもたらされる飢餓リスクを軽減することができる、第二に、今世紀前半において、飢餓リスクは気候条件よりも社会経済条件に強く依存する、第三に、飢餓リスクへの温暖化影響は地域によって異なるが、これは地域間で食料摂取カロリー、作物収量への温暖化の影響、土地のひっ迫度が異なることに起因する。

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気候変化がない場合の飢餓リスクに直面する人口。人口増加や経済発展、技術進歩の違いにより楽観的世界(SSP1)で最も小さく、悲観的な世界(SSP3)で最も大きい

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気候変化により追加的に生ずる2050年飢餓リスクに直面する人口(気候変化がない場合からの増加率)。いずれのシナリオにおいても適応策の効果(あり・なしの違い)が確認できる

本研究の論文情報

Climate change impact and adaptation assessment on food consumption utilizing a new scenario framework
著者: Hasegawa T., Fujimori S., Shin Y., Takahashi K., Masui T., Tanaka A.
掲載誌: Environ. Sc. Techno., (2014) 48, 438-445, DOI: 10.1021/es4034149.

目次:2014年2月号 [Vol.24 No.11] 通巻第279号

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