2014年2月号 [Vol.24 No.11] 通巻第279号 201402_279011

【最近の研究成果】 海水中の硫化ジメチルを連続的に測定する装置の再評価

  • 地球環境研究センター 地球大気化学研究室 特別研究員 大森裕子

揮発性の硫黄化合物である “硫化ジメチル(DMS)” は、大気中において雲の形成や粒子の成長に寄与し、地球の気候に影響を与える重要な物質である。DMSは主に海洋微生物によって生成され、海洋が大気への主要な放出源である。そのため、海表面におけるDMS濃度分布と海洋から大気へのDMS放出量を精確に把握することが、気候システムに関するモデルの精度向上に必要である。

これまで、海水中のDMS濃度の測定には時間と手間がかかっていたため、データの蓄積が困難であった。近年、我々のグループはDMS抽出器と高感度質量分析計を組み合わせたシステムによるDMS濃度の連続測定法を開発し、これによりDMSデータの飛躍的な増加が期待されている。しかし、この最新のシステムにおいて、抽出器内での微生物活動によるDMS生成が濃度測定に影響を及ぼすのではないか?と懸念されていた。そこで、沿岸海水を用いて微生物活動によるDMS生成を確かめる実験を行い、抽出器内の微生物活動によるアーティファクトの有無を評価した。その結果、抽出器内が酸欠状態にならない限り、微生物はDMS連続測定の正確さに影響しないことを証明することができた。さらに、酸欠下におかれると、微生物がDMSを速やかに生成する現象を捉えることができた。本研究結果は、今後のDMS連続測定装置の改良や開発に向けての礎となると期待される。

fig

DMS抽出器内のDMS濃度と酸素濃度の相対的変化。微生物群集を含む沿岸海水を入れた抽出器において、窒素ガスをバブリングしてDMSを抽出し、抽出器内のDMS濃度と酸素濃度の変化を測定した。酸素が枯渇状態になった途端、DMS濃度の急激な増加が確認された

本研究の論文情報

Evaluation of using unfiltered seawater for underway measurement of dimethyl sulfide in the ocean by online mass spectrometry
著者: Omori Y., Tanimoto H., Inomata S., Kameyama S., Takao S., Suzuki K.
掲載誌: Limnol. Oceanogr.: Methods (2013), 11, 549-560.

目次:2014年2月号 [Vol.24 No.11] 通巻第279号

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