2011年10月号 [Vol.22 No.7] 通巻第251号 201110_251002
科学の国の「はて、な」のコトバ 10 ティッピング・ポイント / エレメント
普段の生活で使われるコトバが、科学の国ではちょっと違う意味になることがあります。このコーナーでは、そうしたコトバをご紹介していきます。
英語では、ティッピング・ポイント(tipping point)は「転換点」「転機」という意味があります。欧米では、ファッションやビジネスの分野において、ある時点から急激にトレンドや流行が生まれるといういい意味でも「ティッピング・ポイント」が使われることがあります。 Tipは動詞で「倒れる・ひっくり返る」という意味があり、小さな変化がきっかけとなって、ものごとがひっくり返るような巨大な変化を引き起こす点(時間的な点、時期)が、「ティッピング・ポイント」のイメージです。
人間による温室効果ガスの排出に応じて、地表温度は緩やかに上昇します。これに対して、地球環境を構成する特定の要素は、地表気温上昇がある閾(しきい)値を超えると、それまでの変化よりも急激な変化を引き起こす可能性があります。このような閾値が「ティッピング・ポイント」、急激な変化が生じうる地球環境の構成要素が「ティッピング・エレメント」です。ティッピング・ポイントに到達しうる地球環境の事象として、南極大陸やグリーンランド氷床の大規模な崩落・融解、海洋の大規模循環の停止、アマゾン熱帯雨林の大規模な減少などが考えられています。これらの事象の前兆が現れていないかどうかを注意深く観察するとともに、ティッピング・ポイントとなる地球平均の気温上昇が何度なのかを推定していくことが重要です。
(2025.2.12改訂)