2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号 201401_278004
地球環境豆知識 24 気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書
1979年の世界気候会議(主催:世界気象機関)で、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度の上昇など、人間活動に起因する気候変化が社会経済に顕著な影響を与えることへの懸念が表明されました。1980年代の地球温暖化問題への対応を議論する一連の国際会合を経て、1988年11月に国連環境計画と世界気象機関は、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)を設立しました。IPCCの役割は、地球温暖化とそれに伴う影響や対策に関する最新の自然科学的及び社会科学的知見について評価し、報告書をとりまとめ、地球温暖化政策に科学的な基礎を与えることです。IPCCの活動に関する意思決定はIPCC総会で行われます。
IPCCの組織は、議長団の下に、
- 第1作業部会(WG1:自然科学的根拠)、
- 第2作業部会(WG2:影響、適応、脆弱性)、
- 第3作業部会(WG3:緩和策)、並びに、
- 温室効果ガスインベントリに関するタスクフォース
が置かれ、世界中の科学者の協力を得て活動が行われています。
これまで1990年、1995年、2001年、2007年の4回にわたり評価報告書が公表されました。IPCCの報告書は国際的に合意された科学的理解として、政策検討・国際交渉の場面でも多用されています。1990年の第1次評価報告書は1992年の気候変動枠組条約の採択に、1995年の第2次評価報告書は1997年の京都議定書の採択に重要な役割を果たしています。
IPCC報告書は厳密な手順を踏んで作成されていますが、2007年に発行された第4次評価報告書(AR4)の内容に誤りが見つかり、IPCCは訂正しました。これまでの反省等を踏まえ、国連事務総長とIPCC議長は国際的な学術団体であるIAC(InterAcademy Council)にIPCC報告書の作成手順の評価を依頼しました。IACは2010年8月にレビュー結果を公表し、統制および管理、査読プロセス、不確実性の特徴付けと伝達などについて、主要な勧告がなされました。IACのレビュー結果はIPCC総会で合意され、第5次評価報告書(AR5)の作成やIPCCの運営に反映されています。また、オランダ環境評価庁はAR4第2作業部会報告書の地域ごとの影響を評価する章に関してレビューし、「IPCC報告書の主要な結論に影響を及ぼす誤りはなかった」という結果を2010年7月に公表しました。
こうした経緯を経て、AR5はより透明性・信頼性の高いものになっています。AR5第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の政策決定者向け要約(SPM)はストックホルム(スウェーデン)で開催されたIPCC総会で承認され、2013年9月27日に公表されました。第2作業部会報告書(影響、適応、脆弱性)SPMは、2014年3月に横浜(日本)で開催されるIPCC総会において、第3作業部会報告書(緩和策)SPMは4月にベルリン(ドイツ)で開催されるIPCC総会において、承認・公表されます。さらに10月にコペンハーゲン(デンマーク)で開催されるIPCC総会では統合報告書が承認・公表される予定です。