2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号 201401_278011

【最近の研究成果】 2009年南半球極渦内でのHClとClOの高度分布の観点からの衛星相互比較

地球環境研究センター 地球大気化学研究室 主任研究員 杉田考史

人工衛星搭載の大気観測センサから導出される化学種の高度分布を定量的に評価することは、それらデータを用いた科学研究を行う上で不可欠である。この研究では宇宙航空研究開発機構(JAXA)と情報通信研究機構(NICT)の共同ミッションである、国際宇宙ステーション搭載の超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)による成層圏大気中の塩化水素(HCl)と一酸化塩素(ClO)のデータ質評価を行った。一般に衛星データの相互比較(あるいは検証)は時空間的にある基準を満たす他の測定原理に基づくデータを用いるが、ここでは極渦内での特徴的な現象を定量的に捉えているか否かという観点から他の衛星データとの比較を行なった。高度20km以下の下部成層圏では、南半球春期の極渦内でのみ南極オゾンホールの影響を受けてHCl濃度がフロンガス濃度から制約される上限値(3.2ppbv)近くまで増大する。右図に示すようにSMILESをはじめ他の衛星データも高度19km以下ではHClが総無機塩素量(Cly)の9割以上を占めることを確証した。

fig

2009年11月の南半球極渦内における衛星観測センサ(SMILES、米国MLS、カナダACE-FTS)からのHCl、ClO、およびClONO2体積混合比の高度分布(左)と、それら混合比から計算したHClとClyの比(右)

本研究の論文情報

HCl and ClO profiles inside the Antarctic vortex as observed by SMILES in November 2009: comparisons with MLS and ACE-FTS instruments
著者: Sugita T., Kasai Y., Terao Y., Hayashida S., Manney G. L., Daffer W. H., Sagawa H., Suzuki M., Shiotani M., Walker K. A., Boone C. D., Bernath P. F.
掲載誌: Atmos. Meas. Tech., 6, 3099-3113, doi:10.5194/amt-6-3099-2013, 2013.

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