ARCHIVE2020年10月号 Vol. 31 No. 7(通巻358号)

地球環境研究センター30周年企画 地球環境研究センター30年の歴史(5)

  • 地球環境研究センターニュース編集局

地球環境研究センターは、2020年10月で発足30年を迎えます。8月号から3回にわたり、地球環境研究センターニュースにこれまで掲載された記事をもとに、地球環境研究センターの30年間を紐解きます。

最終回は、2010年4月号から2020年9月号に掲載された記事のなかから、地球環境研究センターの節目となるイベント等について紹介します。

目次

富士山頂でこそ得られる研究成果を目指して

野村渉平 (地球環境研究センター 炭素循環研究室 特別研究員)
(2013年4月号掲載)

1. はじめに

NPO富士山測候所を活用する会が主催した第6回成果報告会が、2013年1月27日に東京大学の小柴ホールにて行われました。本稿では、その成果報告会を主催したNPO富士山測候所を活用する会の紹介と、報告会で発表された成果を紹介します。

2. NPO富士山測候所を活用する会

富士山の頂上にある富士山測候所は、気象衛星の発達により山頂での気象観測の必要性が低下した等の理由から2004年に無人化され、観測施設廃止の可能性が高まっていました。

これを受け、大気化学の研究者たちが、標高3776 mの富士山頂は地上の影響を受けていない自由対流圏に位置し、その大気を定点観測できる測候所が廃止されてしまうのは惜しいと考え、責任ある借受母体として2005年に「NPO富士山測候所を活用する会」を設立しました。この地点の大気観測で得られる大気中成分の測定値は、地上の影響を受けていないバックグラウンド濃度を示し、かつアジア大陸から越境する汚染を捉えられる場所と考えられています。

このNPOが中心となり、2007年から毎年夏期(7〜8月)に大気化学、高所医学や天文学などの研究者が測候所を利用するようになりました。気象関係のみにしか活用されなかった測候所が、現在では幅広い研究分野の活動の場として活用されています。

写真1 富士山頂剣ヶ峯にある富士山測候所(レーダードームは2001年に撤去されている

3. 成果報告会

その研究等で得られた成果は、6年前の2008年から毎年、成果報告会で発表されています。

2013年の報告会では、富士山頂における夏期・年間の大気中成分(二酸化炭素[CO2、一酸化炭素[CO、オゾン[O3、塩化水素[HCl、亜硝酸[HONO、硝酸[HNO3、二酸化硫黄[SO2、ラドン[Rn]、窒素酸化物[NOx、水銀[Hg、微小粒子状物質濃度、雲凝結核濃度とその粒径分布、エアロゾル粒子の粒径、高エネルギー放射線)の測定結果や、富士山頂での落雷・晴天率・恒星の撮影、富士山頂付近の永久凍土の有無、富士山測候所の落雷対策、富士山登山時の急性高山病・酸化ストレスの発症状況などの調査結果が、10名の口頭発表と19名のポスター発表により報告されました。

それぞれの発表は、研究の背景や得た成果が全く異なるものの、富士山で研究を行う動機は、みな、同様なものでした。それは富士山頂で研究を展開することが、目的の成果を最も捉えられる・深められるはずである、という動機でした。

写真2 第6回成果報告会の様子(上:口頭発表、下:ポスター発表

4. 研究成果の一例

当NPOが設立されて以降、どのような成果が出ているのかを簡単にご紹介します。まず筆者が所属する国立環境研究所地球環境研究センターが展開している富士山頂におけるCO2の通年観測についてです。

測候所は、夏期(7〜8月)しか電力が供給されていません。そのため冬期の室温は、室外の気温に近い温度(約−30°C)まで下がります。

このような状況下で、測候所を利用し山頂の大気中CO2濃度を通年計測するために、国立環境研究所では2007年から2009年にかけて、極低温下でも計測可能な機器と、測候所に電力が供給される夏期にバッテリーに充電し、電力が供給されない冬期から春期に、蓄えたバッテリー電力をCO2濃度計測機器に供給するシステムの開発を行いました。

その後、開発したCO2計測機器と電力供給システムを2009年から本格稼働させ、測候所付近の大気中CO2濃度を毎日1回、継続的に計測しています。

写真3 測候所一室にある大気中二酸化炭素濃度を通年観測する機器一式。

計測された富士山頂のCO2濃度は、地上の影響を受けていないバックグラウンド濃度と思われる値であると同時に、大陸からの影響を受けていると考えられ、アジア太平洋地域で富士山頂と同じような高所山岳でCO2のバックグラウンド濃度の観測が行われている中国のMt. Waliguan(標高3810 m)やハワイのMt. Mauna Loa(3396 m)の濃度とは、若干異なる特有の値を示しています(図

このことから富士山頂でのCO2濃度観測は、観測の空白地域であった富士山が位置する東アジアのバックグラウンド濃度を示す大変貴重な結果を積み重ねていることが示されました。

このCO2濃度の計測のほかに、測候所に電力が供給されている夏期に大気化学分野の研究者が計測しているCOやO3、微小粒子状物質などについても、富士山が位置する東アジアのバックグラウンド濃度を示すと共に大陸からの影響を捉えているという研究結果が出ています。このように当NPOが設立されて以降、富士山測候所を用いて、地球規模での物質循環の仕組みを明らかにするための興味深いデータが観測されるようになっています。

 富士山とMt. Mauna LoaのCO2濃度推移。

5. むすび

当NPOは、今後も継続的に富士山測候所を活用しながら有益なデータをとっていき、さまざまな自然観測・観察の拠点、自然科学の研究拠点となっているスイスのユングフラウヨッホのような高所山岳の研究施設として、確立することを目指しています。富士山頂での研究にご興味ある方は、お気軽にNPO富士山測候所を活用する会に連絡ください。

NPO富士山測候所を活用する会ウェブサイト http://npo.fuji3776.net/

※編集局コメント
「作家の新田次郎が気象庁の課長時代に構想し、万難を乗り越えて設置・実現した富士山頂測候所の富士山レーダー及びその関連施設。2004年にその役目を終えた施設跡地を再利用して2009年に開始された日本最高地点での温室効果ガス濃度の連続観測。実はこの場所は日本最高地点というだけではなく、アジア広域の大気観測にこの上なく優れた場所だったのです。NHK人気番組のブラタモリでも紹介された、富士山頂温室効果ガス観測の概要を報告する貴重な資料です」

秋篠宮ご夫妻からも激励 CONTRAILプロジェクトが地球環境大賞特別賞を受賞

町田敏暢 (地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室長)
(2015年5月号掲載)

CONTRAILプロジェクトチーム(国立環境研究所、気象庁気象研究所、日本航空、ジャムコ、JAL財団)が、フジサンケイグループの主催する第24回地球環境大賞の特別賞を受賞しました。

地球環境大賞は持続可能な社会の実現に寄与する技術・製品開発、環境保全活動・事業の促進、地球環境保全に対する意識の向上を目的とした活動を顕彰する制度です。CONTRAILプロジェクトは、民間航空機を使った温室効果ガスの広範囲にわたる3次元分布とその長期変動の観測が地球規模での炭素循環メカニズムの解明に欠かせないデータを提供するなど、この分野での研究を支えていることが評価されました。

授賞式は2015年4月9日に明治記念館にて秋篠宮ご夫妻のご臨席のもと行われ、CONTRAILプロジェクトを代表して日本航空の植木社長が賞状とトロフィーを受け取りました。

国立環境研究所からも住理事長が出席し、プロジェクトを代表して秋篠宮ご夫妻との御懇談に立ち会いました。授賞式後のレセプションで、筆者は実務担当として秋篠宮殿下にプロジェクトの「生」の声を伝える役を仰せつかりました。筆者よりCONTRAILの大きな特徴として観測範囲が広いことを申し上げると、殿下から「JALは以前はブラジルにも飛んでいましたよね」との的確なコメントをいただきました。CONTRAILとしても南米での観測は将来の目標の一つです。

写真1 授賞式でトロフィーを受け取る日本航空の植木社長(左
写真2 授賞式でのCONTRAILプロジェクトチーム。日本航空の植木社長が賞状を、国立環境研究所の住理事長がトロフィーを持っています。

CONTRAILプロジェクトの目的は環境変動の解明に資する研究をすることですが、今回のように社会から評価をいただくことは研究者のみならずプロジェクト参画者にとって大きな励みになったと思っています。今回の受賞に感謝するとともに、あらためてプロジェクトチームのメンバーとサポートをしていただいている皆さんにお礼を申し上げます。

※編集局コメント
「人工衛星、国際船舶、航空機などさまざまな移動手段を活用して進められてきた地球環境研究センターの地球環境モニタリング、なかでも多くの関係者が力を合わせて実施しているのが国際線旅客機を利用して大気中の温室効果ガス濃度の「3次元観測」を行うCONTRAILプロジェクトです。産学官連携の成功例として数々の受賞履歴がありますが、秋篠宮ご夫妻御臨席のもとで受賞式が行われたこの賞は地球環境研究センターの歴史の中でも大きな誉の一つです。まさにワンチームがなし得た大きな成果です」

波照間島での四半世紀の大気モニタリング最近の動き

笹川基樹 (地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室 主任研究員)
津田憲次 (一般財団法人地球・人間環境フォーラム研究業務部 次長)
島野富士雄 (一般財団法人地球・人間環境フォーラム研究業務部 主任研究員)
(2018年4月号掲載)

1. 四半世紀経ち(笹川)

2017年で地球環境モニタリングステーション波照間(以下、波照間ステーション)竣工(1992年)から25年が経ちました。四半世紀です。波照間島の方々、各業者の方々など、多くの関係者の強力なバックアップによって、観測を続けることができました。毎月のメンテナンスを通して力強いサポートをしてくださっている地球・人間環境フォーラムのお二人と一緒に、ここ数年の観測・設備に関する大きな変化をいくつか振り返ってみたいと思います。

2. 20年選手の交代(観測装置の更新)(島野・津田・笹川)

波照間ステーションでは当初から二酸化炭素(CO2)濃度の観測に島津製作所製の非分散赤外線吸収法(NDIR、写真1、XURA-207、装置の概要はリンク先参照 http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201207/260005.html)を使用してきました。CO2観測は1993年から開始しましたので、なんと同じ測定装置で20年以上も観測を続けたことになります。

写真1 島津製作所製のNDIR。

家電製品でもこれだけの長い期間稼働することは珍しいと思いますが、24時間365日の連続稼働で、精密機器であるNDIRがここまで動いたのは、製作会社が堅牢なシステムを構築した上で適切に維持管理を続けてきた結果といえるのではないでしょうか(運も良かったのでしょうが

一方新しい原理の装置を導入していくことも行っています。近年世界中で利用され始めたPiccaro製のキャビティリングダウン分光法(CRDS、写真2、G2401、装置の概要はリンク先参照 http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201612/312003.html)を2012年に導入しました。

写真2 Piccaro製のCRDS。

その後NDIRとの並行運転でデータの連続性を確認しているところです。本CRDSではCO2と同時にメタンと一酸化炭素も測定できるので、他の成分の装置も今後はCRDSに置き換えることができるかもしれません。しかし、2016年7月にこのNDIRは稼働停止してしまいました。現在はLI-COR製のNDIR(LI-7000)が稼働しています(写真3

写真3 LI-COR製のNDIR。

ハロカーボン(炭化水素の水素がハロゲンで置き換わったもの)測定のガスクロマトグラフ-質量分析計(GC/MS)の更新も行われました。こちらも機材が古くて修理ができない状況になったことから、2017年9月に置き換えました(写真4、5、Agilent製7890GC及び5977MS。見た目が格好良くなっただけでなく、質量分析計の仕組みが改良されたので高精度化を期待しています。

写真4 旧GC/MS。
写真5 新GC/MS。

3. データ収集と監視情報システムの更新(津田・島野)

2015年6月1日早朝、波照間ステーションを激しい雷雨が襲いました。近くに大きな落雷があり、その際のサージ電流(過電流)が電話線を伝って侵入し、監視情報ロガー、データサーバーPC、FAX複合機などの電子機器が軒並み壊れるという被害にあいました。幸いにして観測機器には直接の被害はなかったものの、老朽化していた電子機器の大がかりな交換を余儀なくされました。

その後2カ月間は、予備のデータロガーや作業用に使っていたPCで一時的に観測データを収集する状態が続きました。8月に入りやっと新型の監視情報ロガーとNAS(Network Attached Storage)を導入しました(写真6

写真6 データ収集と監視情報システム。

ここでいう監視情報とは、室内の気温、湿度、気圧、電源電圧、採取大気の圧力・流量、除湿器の温度、測定機器の動作情報、ポンプの起動信号等100種類に近い数の信号群です。欠測時間を短くする必要から、大急ぎで信号ケーブルの移設を行いました。移設が終わる頃には誰もが疲れ果てていました。

旧型のデータロガーはウィンドウズやマックではなく、MS-DOSで稼働させる専用の(古い)PCが必要で、遠隔操作による設定変更などの調整ができず、もうメーカーによる修理対応も行ってもらえないような物でした。

新型のデータロガーは、メモリーカードへの自動バックアップ、自動転送機能、データサーバー機能など、旧型のデータロガーとは比較にならない程の高機能です。このおかげで、毎日、つくばから波照間の施設の状態や機器の状況をきめ細やかに監視できるようになっています。

一方、データサーバーPCの代わりに導入されたNASは各種の測定装置からのデータを収集し、つくばの別のNASとネットワーク越しにレプリケーション機能を使ってバックアップされています。レプリケーションとは「複製(レプリカ)をつくること」の意味で、ほぼリアルタイムで収集データのコピーがつくばのNASにも作られます。これは、遠隔地にあるデータの災害対策にとって頼もしい機能です。

さらに、全ての機器は無停電電源装置(UPS)で保護され、停電が発生すると速やかに自家発電システムが起動し、空調以外の全ての観測装置に電力を供給するようになっています。

4. データ処理作業の更新(津田)

このような施設・観測装置の整備や更新に伴い、近年、それまでよりも安定した観測ができるようになりました。これに伴い、観測装置から出てくるデジタルデータを物理的な濃度に変換する作業を自動化して、迅速に処理できる環境も整ってきました(図1

図1 CO2計算ソフトで濃度結果をグラフ化した時の様子。グラフは日別で表示され、計算用設定値と閾値リストを確認しながら異常値が入り込まないようにしている。具体的には、①標準ガスが安定して既定の時間間隔で測定できているか、②大気サンプルの流量が適正で、極端なばらつきが無いか、③検量線は正しく書けているか、④速報値と計算値がどれだけ違っているかなど、設定や確認を行いつつ処理が可能となっている。

NAS設置から遡ること3年、CO2データ計算の自動化ソフトのプロトタイプが完成したのは2012年2月のことでした。これまで、研究者自身が手間の掛かる複雑な数値処理を強いられてきたことを思えば、誰もが処理できてエラーも排除できる新システムは大きな進歩です。

実は、自動処理できるようになった最大の要因は、観測データの精度がどのような測定パラメータに依存しているのかがわかってきたからです。それでもノイズを多く含んだデータには目印(フラグ)を立ててユーザーに注意を喚起しています。プロトタイプが完成した約10カ月後、一般ユーザーにとって利便性の高いNASAのAMES形式によるデータ公開専用の出力ができるように改良されました。

その後、さらに測定パラメータを増やしたり、フラグの種類を変更したりする改良を続け、現在に至っています。また、CO2だけではなく、メタンやハロカーボンの自動化処理ソフトの開発も進んでいます。どのソフトも研究者が長年苦労して見出した観測のノウハウが反映されています。

5. 新たな塩害対策(島野・津田・笹川)

波照間ステーションでは、塩害への対策を避けて通ることはできません。金属の腐食はもとより、エアコン室外機の冷却フィンの間に塩が結晶化して短期間で壊れてしまいます(写真7。これは長年にわたる深刻な問題でした。ステーションには水道設備がないので、室外機を水洗いすることもできません。そこで、雨水をためて室外機を自動で洗浄する装置を設置しました。

写真7 塩害でボロボロになった室外機。

島の方々の生活の中で、雨水の利用は珍しいことではなかったので、この装置の作製には島の方の知恵もお借りしました。例えば、台風時には海水がかなりの高さまで巻き上がるため、雨水をためる容器に塩水がたまってしまうことがわかっていました。そこで台風時には屋外から水が侵入しないようなコックをとりつけました(写真8

写真8 水をためるためのタンクとコック。垂直方向の塩ビ管で屋根からの雨水を集める。水平方向の塩ビ管は空調のドレインを集める。

また、乾季には雨水だけでは洗浄水不足が心配なため、室内を冷やす際にエアコンから出るドレイン(熱交換器の結露水)もためられるようにしました。日に何リットルも出るドレインを使わない手はありません。雨水を利用した室外機洗浄装置(写真9)は、2015年に完成しました。

写真9 室外機洗浄装置。タンクにためた雨水を噴霧して定期的に室外機に付いた海塩を洗い流す。

使用しなくなった換気ダクトにも塩害は及び、そこからでる鉄さびが壁に茶色い筋を作ることもありました。見た目が汚いだけではなく、強度がなくなりいつかダクト自体が落下する危険性がありました。そこでダクトの撤去を行い、壁も綺麗に塗装して今後はさびが出にくい形にしました。

6. 25年分の大掃除(島野・津田・笹川)

観測当初は余裕をもって様々な物品を準備していました。その後、装置の入れ替えなどもあり、今では全く使わない物品が棚や空きスペースの場所を取ってしまっていました。今となっては持ち込んだ人も管理者も、何のために持ってきたのか、不明な物があったりしていました。また、当初は配置換えも考慮して余裕をもたせていた配線が、今ではかえって場所を取っていたりしました(写真10。25周年を機に、今後の長い観測継続のために、役目を終えたものを思い切って整理しました。

写真10 余裕をもたせて置いていた配線が絡まっていた。

7. 観光客対策(島野・笹川・津田)

近年、波照間島への観光客が増加してきました。そのためか、部外者によるステーションへの訪問が何度かありました。2014年頃から屋上のカメラの調子悪かったのですが、防犯上の理由からも2016年6月に更新しました(写真11

写真11 更新された屋外カメラ。リモートで見る方向を変更できる。

また、敷地の前には案内の看板(写真12)を設置し、施設の簡単な説明や非常時の連絡先を周知するようにしました。さらに施設の入り口には監視カメラの増設も行うことで、迷い込んでしまう人がないよう、ステーションに人がいないときでも状況を把握できるような対策を行いました。

写真12 ステーション入り口に取り付けた看板。

8. 終わりに(笹川)

地上モニタリングを担当する笹川は過去の地球環境研究センター研究管理官が築き上げてきた歴史の中では、井上・藤沼時代、向井時代の次の世代に該当するかと思います。向井センター長は国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」で「100年モニタリング」をうたっていますが(http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/62/02-03.html、100年はここまでの4倍の期間です。これから研究者も5–6世代がこれを引き継ぐことになるでしょう。気が遠くなりますが、ハード面もソフト面も、それだけ長く続くような堅牢なステーションにしたいです。担当者が代替わりしても問題なく継続する形が理想です。

※編集局コメント
「地球環境研究センター設立後、日本最南端の島にわずか2年で竣工し、1993年から定常観測を始めた沖縄県波照間島での温室効果ガスモニタリング。毎年のように台風の直撃を受け、海沿いの吹きさらしの場所にある過酷な条件の下、無人の施設内で精密機器による安定した観測を続けてきたことは驚くべきことです。とはいえ、長期モニタリングを1つの機器だけで数十年以上続けることはできないため、新しい機器へのバトンタッチや新しい原理の機器の導入、新旧2つの機器による同時観測など、正確な観測を長期継続できるような様々な取り組みがなされています。通常は報告されない観測を支える裏方的な取り組みについての記事をぜひご覧いただきたいと思います」

コラム:地球環境研究センター出版物等の紹介 地球温暖化研究のフロントライン最前線の研究者たちに聞く

(2013年4月号掲載)

下記の出版物が地球環境研究センターから発行されました。ご希望の方は、送付先、送付方法を記入し、E-mail、FAX、または郵便にて【申込先】宛にご連絡下さい。送料は自己負担とさせていただきます。出版物のPDFファイルはウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/publications/report/index.html)からダウンロードすることもできます。

地球温暖化研究のフロントライン最前線の研究者たちに聞く(CGER-I109-2013)

本書は地球環境研究センターニュースの2009年5月号から2012年9月号に掲載したインタビューシリーズ「温暖化研究のフロントライン」を取りまとめ、その後の動向などを加えたものです。

本シリーズは、地球温暖化問題が社会で認知されつつある現在、地球温暖化研究に携わってきた研究者たちは何を次なる問題として捉え、何を明らかにしようとしているのか、それは地球温暖化問題に関する理解を深める上でどういう意味をもっているのかを探ることを目的として、所内外の21名の第一線の研究者の皆さまに当研究所で地球温暖化研究に携わる研究者がインタビューさせていただいたものです。

内容は、地球温暖化研究に関するものだけでなく、研究者」とは、どうやって研究者になったのか、自然に接した子ども時代の思い出や研究者を志した動機など楽しい話も織り交ぜられ、地球温暖化問題の専門家だけでなく、一般の方々や将来研究者を志す若い世代の方々など、多くの方に読んでいただけるものになっています。

【送付方法】
1. 前払い(ゆうメールにてお送りいたします。送料分の切手を先にお送り下さい)
〇I109出版物1冊:215円分の切手をお送り下さい。
〇2冊以上:下記【申込先】まで郵送料をお問い合わせのうえ、切手をお送り下さい。
2. 着払い(受け取り時に送料をお支払い下さい)
〇ゆうメール:郵送料の他に手数料として21円かかります。
〇宅配便:電話番号を明記してお申し込み下さい。

【申込先】
国立環境研究所 地球環境研究センター 交流推進係
〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
FAX: 029-858-2645 E-mail: www-cger@nies.go.jp