2018年12月号 [Vol.29 No.9] 通巻第336号 201812_336002

「女子中高生夏の学校2018〜科学・技術・人との出会い〜」への出展に協力して

  • 国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 高田久美子
  • 気象庁気象研究所 小田真祐子

1. はじめに

「女子中高生夏の学校」(以下「夏学」)というイベントを耳にされたことがあるでしょうか。夏学は、女子中高生が「科学技術にふれ」、科学技術の世界で生き生きと活躍する女性たちと「つながり」、科学技術に関心のある仲間や先輩とともに「将来を考える」機会として、2005年より毎年開催されています(主催:独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)、https://www.nwec.jp/event/training/g_natsugaku2018.html)。日本気象学会では、昨年からブースでのポスター展示に出展しており、今年は地球温暖化の研究について紹介しました。地球環境研究センターから、これに出展協力しましたので報告します。

夏学は、全国から集まった女子中高生が2泊3日の合宿研修を行い、その中で科学研究者、技術者、大学生・大学院生等との交流を通じて、理系進路の魅力を知り、理系に進もうという意志を高めることを目指しています。例年、中高生が自分のキャリアを考えるためのヒントとなるような講演やクイズスタンプラリー、ミニ実験講座、ポスター展示、先輩社会人や大学生との懇談会、キャリアプランニングなど、多彩なプログラムが用意されています。14回目となる今年は8月9日〜11日に、埼玉県比企郡嵐山町の国立女性教育会館で開催され(写真1)、96名の女子中高生が集まりました。台風接近のため開始時刻が2時間繰り延べにはなりましたが、大部分のプログラムは予定通り行われ、活気溢れる会になりました。

写真1「女子中高生夏の学校」会場エントランス

2. ポスター展示等の様子

気象学会が作成したポスター展示は2日目午後に行われました。参加者は思い思いに興味のある分野の話を聞いたり、キャリア相談をしたりします。理/工/農/医学系の学会のほか、研究所や会社なども合わせて、今年は40の団体が出展しました。活動紹介のポスターに加えて、実験・観察のデモンストレーションをしたり、相談コーナーを設けたり、スタッフがお揃いの衣装を身につけるなど、生徒達が楽しみながら理系の仕事に就いている人たちと交流できるよう、様々な工夫が見られました。

日本気象学会では、今年は温暖化予測について紹介しました(昨年のテーマは天気予報)。「温暖化」という言葉は知っていても、実際にどのように研究が行われているのか、猛暑日が多くなったから温暖化といえるのか、といった点はあまり知られていないと考えて、温暖化と気候モデルについて説明したポスターを作りました(写真2、https://www.metsoc.jp/2018/09/14/13026)。加えて、地球環境研究センターが作成・配布している広報グッズ(ココが知りたい地球温暖化リーフレット、地球環境ぱらぱらマンガシリーズ、クリアファイル)を今後の参考資料として持ち帰ってもらったり、一般公開で使用した温暖化予測のイベントアトリビューション[注]を説明するピンボール模型(写真3)を展示して温暖化予測の説明をしたりしました。今年の夏は各地で猛暑日が続くなど、温暖化への関心が高まっていたこともあって、ポスター会場の一番奥に配置されていたにもかかわらず、「気象に興味がある」とピンポイントで来てくれた生徒もいましたし、「地球や環境に興味がある」といった生徒がたくさん立ち寄ってくれました(写真4)。また、どうすれば将来こういう仕事に就けるかなど、進路に関する話をすることもできました。

ポスター展示の後には、小グループの懇談会企画(Gate Way)がありました。5名程度の生徒のグループが、「理系苦手だったってホンマでっか!」「物理屋さん」「受験勉強応援隊」など、様々なテーマに分かれて待機しているスタッフと気軽におしゃべりします。生徒達は約1時間半の間に思い思いのテーマを3〜4つ巡って、スタッフのざっくばらんな話を熱心に聞いたり質問したりしていました。

写真2日本気象学会の展示ブースで掲示したポスター、配布資料など

写真3地球環境研究センターから提供した、イベントアトリビューションのピンボール模型(上)、地球温暖化の広報用資料(下)

写真4参加生徒に空の写真を説明する気象研究所の小田と温暖化の説明をする気象キャスターの竹下氏

3. 所感

気象学に興味があったりなかったり、漠然と地球に関することや理系に興味があるなど、いろんな参加者がいましたが、どの参加者も熱心で、エネルギーに満ち溢れていました。そういった年代の参加者と触れ合う中で、私たちスタッフもエネルギーをいただいた気がします。

地球環境研究センターから提供した広報グッズは大変好評で、オゾン層の役割や森林による二酸化炭素の吸収と放出など、参加生徒の様々な興味に対応することができました。また、ココが知りたい地球温暖化のリーフレットを「教材として活用したい」と持ち帰った教員の方もいました。

今回、日本気象学会の出展に協力することを通して、地球温暖化研究の取り組みをより広く知ってもらう機会になったと思います。

脚注

  • 特定の異常気象「イベント」を対象に、温暖化がその現象をどれだけ起こりやすくしていたかという、「温暖化リスク」を確率的に評価するシミュレーション。(参考文献:「絵でわかる地球温暖化」渡部雅浩著、講談社)

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