2015年1月号 [Vol.25 No.10] 通巻第290号 201501_290001
CONTRAILプロジェクトがボーイング社のecoDemonstrator787フライトに参加!
このたび、米国のボーイング社が次世代主力旅客機となる787-8型機を使用して2014年11月から12月にかけて実施した環境負荷軽減航空技術の実証実験(ecoDemonstrator Program)の際に、国立環境研究所など日本のチームが開発した大気中の温室効果ガスを観測する装置が搭載されました。

写真1ecoDemonstratorに使用されたボーイング787-8型機

写真2機体には国立環境研究所(NIES)のロゴマークもペイントされています
地球環境研究センターを中心とする研究チームが実施している航空機による大気観測プロジェクトはCONTRAIL(「コントレイル」とよぶ)プロジェクト[注]と名付けられ、現在の世界主力旅客機であるボーイング777-200ER型機計8機に、2種類の観測装置(CO2濃度連続測定装置:CME:Continuous CO2 Measuring Equipmentおよび、自動大気採取装置:ASE:Automatic Air Sampling Equipment)を搭載して、世界中の上空で温室効果ガス濃度を測定しています。
今回のecoDemonstrator787フライトでは、CME、ASEに加えて、CONTRAILチームが新たに開発を続けている二酸化炭素を含む多成分連続測定装置(MME:Multi-species Measuring Equipment)のプロトタイプも787-8型機に搭載されました。また、ボーイング社のウェブサイトでは2014年のecoDemonstrator Programに国立環境研究所が協力していると発表しています。

写真3CME、ASE、MMEを組み込んだ観測モジュール

図1ボーイング社のウェブサイトより
今回のフライトは米国シアトル周辺空域での試験的な飛行に留まりましたが、この試験の成功によりCONTRAILプロジェクトで開発した観測機器が次世代の787-8型機に搭載されても、正常に稼働することが確認できました。そして、これら観測機器が搭載航空機の安全性を妨げないことが実証されたため、審査の厳しい商用旅客機への搭載申請にも道が開けたことになります。
新開発のMMEでは、二酸化炭素だけでなくメタンの連続観測が可能となり、鉛直分布のデータも得られることから、これまでにない体系的な温室効果ガスの観測結果が得られると期待されます。さらに二酸化炭素濃度などの観測データが、気象に関するデータとともにリアルタイムで地上に送信されることも確認できたため、新たな研究や解析の展開が可能となります。
皆様もこのマークの付いた旅客機(日本航空国際線ボーイング777)にご乗車の機会があれば、一緒に世界の二酸化炭素を測定しているのだなあと感じていただければ幸いです。

図2CONTRAILプロジェクトが行われていることを示すマーク
脚注
- CONTRAILプロジェクトは国立環境研究所、気象研究所、日本航空、ジャムコ、JAL財団が共同で実施しています。
CONTRAILプロジェクトに関する過去の記事は以下からご覧いただけます。
- 町田敏暢「観測現場から—JAL— 航空機の『おなか』の中」2006年12月号
- 町田敏暢「観測現場から—JAL— 世界を旅するCME」2008年2月号
- 町田敏暢「CONTRAILプロジェクトが始まって5年経ちました」2010年12月号
- 白井知子「成田上空の二酸化炭素濃度の短周期変動—民間航空機を利用した大気観測結果の解析—」2013年3月号
- 町田敏暢「長期観測を支える主人公—測器と観測法の紹介— [5] 旅客機でCO2を測る:民間航空機搭載型の自動CO2測定装置」2013年3月号
- 広兼克憲「『空飛ぶ実験室』コントレイルプロジェクト、環境大臣賞を受賞!」2013年9月号
- 地球環境研究センターニュース編集局「インタビュー『空飛ぶ実験室』が上空の二酸化炭素濃度観測を変える—CONTRAILプロジェクト—」2013年12月号