2014年6月号 [Vol.25 No.3] 通巻第283号 201406_283007

【最近の研究成果】 CO2濃度上昇による直接的な大陸上の気温上昇が気候変化に果たす役割

  • 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 特別研究員 釜江陽一

四季の変化に富む日本の気候は、西側のユーラシア大陸と南側の太平洋から大きな影響を受けて形成されています。20世紀半ば以降のユーラシア大陸上の気温上昇は、太平洋上よりも大きく、今後もその傾向は強まると考えられています[1]。大陸上と海洋上の気温上昇量の違い(海陸昇温コントラスト)は、それに応じた大気の循環パターンの変化を通して、東アジアを含む世界各地の気候に大きく影響します。

世界中の気候モデルで実施された実験結果を調べると、夏季の北半球中・高緯度で形成される海陸昇温コントラストは、大気中の温室効果ガス(主にCO2)濃度の上昇により、直接的に陸が暖められることが主な原因であることがわかりました。これは、低緯度では海面の水温上昇の影響が効率よく陸上の大気に伝わるのに対し、中・高緯度では海の影響が陸上の大気に伝わりにくいためです[2]

人間活動によって、大気中のCO2濃度が一定のスピードで上昇し続けても、自然のゆらぎの影響で、海面の水温上昇は一定のスピードでは進みません[3]。海と陸の温度上昇それぞれが果たす役割の違いに注目することで、気候変化のメカニズムをより詳しく解明することができます。

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地球温暖化時の夏季の地上気温上昇のパターン(地球全体の気温上昇1度あたり)と、それに対するCO2濃度上昇、海面水温上昇の効果。緯度によって海陸昇温コントラストの形成要因が異なる様子を表している

脚注

  1. 釜江陽一「【最近の研究成果】 海陸の温度コントラストを通した夏季東アジアの気候変動メカニズムの解明」地球環境研究センターニュース2014年3月号
  2. 低緯度では大気重力波と呼ばれる波動により、自由大気が効率よくかき混ぜられますが、中・高緯度ではコリオリの力の関係でロスビーの変形半径が小さいため、海面水温が上昇しても、陸上の気温は低緯度ほど上昇しません。
  3. 釜江陽一, 塩竈秀夫「【解説】この異常気象は地球温暖化が原因?」 http://www.cger.nies.go.jp/ja/news/2014/140404.html の「近年の温暖化の停滞傾向(hiatus)」を参照

本研究の論文情報

Summertime land–sea thermal contrast and atmospheric circulation over East Asia in a warming climate—Part II: Importance of CO2-induced continental warming
著者: Kamae Y., Watanabe M., Kimoto M., Shiogama H.
掲載誌: Clim. Dynam., (2014) DOI: 10.1007/s00382-014-2146-0.

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