2013年3月号 [Vol.23 No.12] 通巻第268号 201303_268006
オフィス活動紹介—国環研GOSATプロジェクトオフィス— 最近のGOSATデータプロダクトの公開の状況〜植生指数プロダクトの公開を中心として〜
1. はじめに
前回のGOSATプロジェクトオフィスの活動紹介は2012年8月でしたので、その後のGOSATデータプロダクトの公開状況をご紹介します。GOSATの主要なプロダクトである二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)のカラム量(TANSO-FTS SWIR(短波長赤外)レベル2プロダクト)については、最新バージョン(Ver.02.xx)による2009年6月からの再処理が完了し、過去から現時点までの新バージョンのプロダクトが揃いました。これにより、当プロダクトにおける連続的な季節的変化や経年変化を見ることができるようになりました。また、その結果と地上観測データに基づいて算出した2009年6月から2010年5月までの地域別・月別のCO2吸収排出量(GOSATレベル4Aプロダクト)と、その結果を利用してモデルシミュレーションにより算出したCO2の3次元全球データ(GOSATレベル4Bプロダクト)を、2012年12月より公開しました。これらのプロダクトの詳細に関しては、プロジェクトの担当研究者が当ニュースの2013年1月号(Vol.23 No.10)で紹介済みです。さらに、2012年11月には植生指数プロダクト(TANSO-CAIレベル3 NDVIプロダクト)を公開しました、これについて以下に簡単に紹介します。
2. 植生指数プロダクト
植生指数(Normalized Difference Vegetation Index: NDVI)とは、以下の式で定義される指標です:
GOSATに搭載されている画像センサである「雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)」には、四つの観測バンドがあります。上記の式で、ref 2とref 3は、TANSO-CAIのバンド2(赤、0.674ミクロン)とバンド3(近赤外、0.870ミクロン)で観測された各画素の地表面反射率(reflectance)を表しています。つまり、近赤外の反射率から可視光の反射率を差し引き、それらを両者の和で割ったものです。なぜこの指標から植生の活性度の指標が与えられるかというと、植生の反射率は可視光(特に赤色部分)で低く、近赤外光で高いという性質があり、さらにそれらの差は植生の活性度が高いほど大きくなるためです。また、差を和で割っているのは、センサに到達する光量は山の斜面の明るい暗いなどで変化するため、全体の光量に左右されずに、近赤外光と可視光との相対的な差の大きさを求めたいためです。和で割ることによって、明るい場所でも暗い場所でもNDVIの値はあまり変わらなくなります。上のNDVIの演算式は、リモートセンシングの分野では一般的ですが、センサによって可視や近赤外の波長帯が同一ではないため、厳密にはセンサによってNDVIは同じ値にはなりません。しかし、どのセンサでも概ね植生の活性度を表すことができます。
NDVIは多くの場合0から1の間の値をとり、大きいほど植生の活性が強いことを意味します。植生の含まれない領域に対しては一般的に値は小さくなります。このプロダクトでは、海域は演算の対象外にしています。陸域でも雲がある領域の植生指数は求められないので、別途公開している雲フラグ(TANSO-CAIレベル2プロダクト)の算出方法と同様の手法により雲を除去しています。ただし、まだ、完全には除去されていません。
NDVIプロダクトは、1/30度メッシュ(約4km間隔)で算出していますが、以下に、0.1度メッシュ(約10km間隔)の全球NDVI分布を2009年7月と2010年1月を例に示します。また、あわせて同年月のTANSO-FTS SWIRレベル2プロダクト(Ver.02.00)から作成したCO2のカラム平均濃度(XCO2)の全球マップも示します。7月の北半球はXCO2が低く、NDVIが大きくなっていることがわかります。一方、1月高緯度地域は欠けていますが逆の傾向が見えています。
3. まとめ
2013年1月で、GOSATは打ち上げ後4年を経て、当初に計画していた標準プロダクトを概ね公開することができました。TANSO-FTS TIR(熱赤外)レベル3プロダクトなど、未公開の標準プロダクトの公開や、すでに公開された標準プロダクトのバージョンアップによるデータ質の向上、研究プロダクトの研究者への提供などが、GOSATプロジェクトオフィスとして残された課題です。