2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号 201409_286008

夏の大公開「さあ漕ぎ出そう、エコ世界への大冒険!」を開催しました

  • 地球環境研究センター データベース推進室 主任研究員(国立環境研究所一般公開実行委員) 白井知子

2014年7月19日(土)に、恒例の国立環境研究所「夏の大公開」を開催しました。天気予報は雨と客足が危ぶまれましたが、実際にはたまに小雨がぱらつく程度で、むしろ気温が上がり過ぎず、過ごしやすい一日となりました。研究所全体での来所者数は、昨年度とほぼ同等の4,144名でしたが、地球温暖化研究棟では、来場者受付が近くに設置されたこともあり、昨年を大きく上回る数のお客様にご来場いただきました。受付はいつも賑わっていて休む暇もなく、昨年度実績で準備した配布物を午前中で配り終えてしまい慌てて補充に走る担当者の姿もありました。行った主な企画は以下の通りです。

「ココが知りたい生パネル、地球温暖化と国際協力・将来の社会」

昨年に引き続き、来場者の皆さんと意見を交わしながら地球温暖化やエネルギーの問題について考える、パネルディスカッションを行いました。詳細は、地球環境研究センターニュース本号「あの『夏の大公開』で、敢えて難しい話題に挑んだココが知りたい生パネル第3弾—地球温暖化と国際協力・将来の社会—」をご覧下さい。

潜入! 実験室ツアー「世界の空気はここで測る」

地球温暖化棟では、公開エリア以外の施設(実験室・データ処理室等)を登録制で特別に公開するラボツアーを毎年行っています。今年は、世界中で、様々な手法によりサンプリングした大気中の温室効果ガスの濃度を精密分析している「航空機モニタリング分析室」をご案内しました。沢山のガスボンベが並び、真空ラインの配管が張り巡らされた実験室で、無人でサンプリングするためのバルブ自動開閉装置を実際に操作したり、ガスクロマトグラフで分離・検出された各温室効果ガスのピークをリアルタイムで確認したりと、大気分析に馴染みのない参加者にもわかりやすいように工夫しました。午前と午後で計6回行いましたが、全回満員の人気ぶりでした。

地球環境モニタリング「空から測る」「海で測る」「宇宙から測る」

地球温暖化という現象をとらえるためには、環境中の温室効果ガスの観測が不可欠です。ラボツアーでも実験室をご紹介した、航空機による大気観測プロジェクト「CONTRAIL」では、航空機搭載測定機器の実物を展示し、どのような仕組みで民間航空機を用いた大気観測を実現させているのかをわかりやすく説明しました。

また、今年は新しく、海が二酸化炭素を吸収したり放出したりすることや、二酸化炭素が海に吸収されると海水が酸性化することを楽しく知っていただくために体験型の実験を行いました。実験は、液体の酸性・アルカリ性を調べる溶液(BTB溶液)を混ぜた海水入りの小瓶に呼気や外の空気を入れて振り混ぜた時の色の変化を観察するというものです。海水が自分の息の中に含まれる二酸化炭素を吸収して青色から黄色に変わったり、部屋の空気を入れて振り混ぜるとまた青色に戻ったりする様子に、お子さんから年配の方まで皆さん驚かれていました。

今年で観測開始から5年目を迎える温室効果ガス観測衛星「いぶき」の展示は、「パネルで探検クイズ」のテーマだったこともあり、パネルに隠されているクイズの答えを見つけようと、たくさんの方が、見学して下さいました。答え探しは、幼稚園〜小学校低学年の小さな子供たちにとっては、まさに親子での共同作業。自力派の中高生も、全問回答を終えたときは、ほっと一息です。一方、直径約80cmの球面ディスプレイへの衛星観測データの投影は、今年も大人気。自在に地球を動かし、「宇宙から」見ている感覚は、好奇心をそそるのでしょうか。

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写真1海洋酸性化実験では、二酸化炭素が海水に吸収されることで溶液の色が変化する様子に子供から大人まで多くの来場者が関心を寄せていました

温暖化影響モニタリング「植物や土壌によるCO2の吸収・排出」「高山生態系への影響」

植物や土壌の影響による二酸化炭素濃度の変化を見る実験もありました。実際に観測に用いる自動開閉チャンバーシステムを運転し、土壌から発生した二酸化炭素がチャンバー内にたまっていく際の濃度変化を、大画面スクリーンで見ていただきました。一方で、植物苗を入れたチャンバーにLEDランプを照射して、光合成によってチャンバー内の二酸化炭素が減少していく様子も観察していただきました。来場した方々の多くは、土から二酸化炭素が発生するという事や、植物が沢山の二酸化炭素を吸収する事に驚かれていた様子でした。また、チャンバー内にチューブを通して呼気を吹き込む実験は、自分の息でチャンバー内の二酸化炭素濃度が一気に上昇するのがはっきりと分かるため、お子さん方に大好評でした。

温暖化に対して脆弱な高山帯における長期モニタリングの紹介としては、北海道の利尻山や北アルプスの槍ヶ岳、立山などに設置しているライブカメラ画像により、つくばにいながら標高3,000m級の山岳の今現在の様子をご覧いただきました。涼しげな山岳写真を楽しみながら、高山の融雪過程と植物の季節変化を実感し、気候変動の影響について考えていただきました。

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写真2屋外に設置したチャンバーを開閉しながら、植生や土壌の影響でチャンバー内の二酸化炭素濃度が変化する様子を特大スクリーンでご覧いただきました

地球温暖化とオゾン層破壊の解説

数値シミュレーションによる気候変動予測チームでは、Flashを使ったオゾン層クイズと温暖化クイズ、気候モデルの空間解像度向上を実感するレゴブロック、「5分で解説します。温暖化編」「5分で解説します。オゾン層編」の展示を行いました。

クイズはネコのイラストがかわいい「おこさま編」とひねりのきいた問題が並んだ「おとな編」があり、順番待ちができるほどの人気でした。レゴブロックの展示は、ここ10年ほどで気候モデルの解像度がどれくらい向上したかを実感していただくためのもので、最新の約50km解像度と昔の300km解像度で、日本列島の見え方や標高分布が大きく変わり、より詳細な計算ができるようになっていることをお伝えできました。「5分で解説します」は温暖化とオゾン層の最新の科学的知見に関して、パワーポイントを使って、5分で解説しました。

パネルで探検クイズ うちゅう編

今回のクイズのテーマは「宇宙からの地球観測」。受付でクイズシートと蛍光ペンを受け取り、展示を回ってクイズに回答すると、地球環境研究センターオリジナルミニタオルがもらえる人気企画です。シートを受け取った参加者は辺りをキョロキョロ。目的のパネルのある温室効果ガス観測衛星「いぶき」の展示は子供たちで大賑わいでした。クイズをきっかけに、普段じっくり見ないような展示にも足を運び、関心を持ってもらう、というこの企画の趣旨が大いに達成されていました。クイズシートや景品の配布数から換算して、何と800名近くもの人が参加して下さったようです。

ぱらぱらマンガ喫茶/挑戦! 折り紙手品!/かるた選手権—太陽と紫外線かるた

幼いお子さんのための企画としては、ジュースを飲みながら工作(ぱらぱらマンガ、ボンっと変身カード、「太陽と紫外線」かるたミニ本)などが楽しめる部屋を設けました。ぱらぱらマンガ以外は用意したものがすべてなくなりました。また、午前中だけですが、昨年好評だった「太陽と紫外線かるた」選手権を行いました。今回は子供だけではなく、お母さんにも挑戦していただきました。みなさんノリが良く、大いに盛り上がりました。飲み終わったジュースのごみの分別がきちんとされていたのは、参加者の環境への関心の高さを表しているのでしょう。

自転車de発電

自転車をこぐエネルギーを電気のエネルギーに変えて、家電製品を動かすことで、エネルギー消費量について体感してもらうこの企画は、今年から、年齢(小・中・高・一般)と性別でクラス分けしたランキングを出すようにリニューアルしました。そして、参加者には、発電の時系列グラフや暫定順位を表示した認定書をお渡ししました。お友達どうしで競い合い、何度もトライしている方や、クラス1位を狙っていると話される方もおられるなど大好評で、口コミで広まったためか、午後は行列が途切れることがありませんでした。反面、熱中するあまり、体調不良になられた方もおられましたので、次回から連続でプレーされる方にはご注意を促す必要がありそうです。

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写真3真剣に自転車を漕ぐ「自転車de発電」の参加者たち。右端のディスプレイに自分の発電量が表示されるので、より高い数値を目指して気合を入れていました

夏の大公開では、毎年工夫を凝らした企画で皆様をお待ちしています。最近は、TXつくば駅より無料循環バスも運行される(今年は10分間隔)等、アクセスも良くなっていますので、是非一度足をお運びください。

目次:2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号

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