2013年10月号 [Vol.24 No.7] 通巻第275号 201310_275006

【最近の研究成果】 西シベリアのタイガにおける二酸化炭素フラックスの推定

  • 地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室 主任研究員 笹川基樹
  • 地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室長 町田敏暢 ほか

シベリアには世界最大のタイガが存在するため、全球に及ぼす二酸化炭素フラックスの影響は大きいと予想される。しかしこれまでシベリアにおける温室効果ガス観測は限られたものであった。本研究では、夏季に西シベリアのタイガ上空を航空機で数時間毎に複数回飛行することで、二酸化炭素濃度の鉛直分布の日変動を観測し(図)、タイガの植生による日中の二酸化炭素フラックスを推定した。これまでの報告値より幅広い値(−36.4±0.5〜+3.8±0.5 µmol m−2 s−1)を示した。日照時間が最も長くなる7月の夕方には、これまでに観測されたことの無い非常に大きな負のフラックスが観測され(−32.6±0.6、−36.4±0.5 µmol m−2 s−1)、タイガの植生による吸収量がこれまで予想されていた値より大きく変動する可能性を示した。観測数が限られるため、季節差や年変動を定量的に議論するには更なる観測が必要となる。

fig. 二酸化炭素濃度

西シベリアタイガ上空における二酸化炭素濃度(ppm)の鉛直分布の日変動(2003年7月15日)。横軸は地方標準時。日中のタイガの植生の光合成によって、下層の濃度が減少していく

本研究の論文情報

Aircraft and tower measurements of CO2 concentration in the planetary boundary layer and the lower free troposphere over southern taiga in West Siberia: Long-term records from 2002 to 2011
著者: Sasakawa M., Machida T., Tsuda N., Arshinov M., Davydov D., Fofonov A., Krasnov O.
掲載誌: J. Geophys. Res.-Atmos., 118, 9489-9498, doi:10.1002/jgrd.50755, 2013.

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