COLUMN2024年12月号 Vol. 35 No. 9(通巻409号)

観測現場発 季節のたより[32] 夏の陸別訪問と銀河の森天文台の外壁と屋根防水補修工事

  • 森野 勇(地球システム領域 衛星観測研究室 室長)

北海道足寄郡陸別町にある陸別町立「陸別宇宙地球科学館(銀河の森天文台)」内の「NIES陸別成層圏総合観測室」では、太陽光を観測する高分解能フーリエ変換赤外分光計(FTIR)を用いた成層圏や対流圏における微量気体の長期変動のモニタリングを行っています。更に、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)及びその後継機であるGOSAT-2のプロダクトの雲やエアロゾルによる影響を評価するために、これらの高度分布を観測するライダーや雲や光学特性を観測するスカイラジオメーター等の観測を、FTIRと一緒に行っています。なお、FTIRモニタリングについては、「太陽光観測による大気微量成分のモニタリング-FTIRモニタリング事業の紹介-」(地球環境研究センターニュース2024年4月号)をご参照ください。陸別ライダーについては、「観測現場発季節のたより17 秋の陸別〜一足先に感じる冬の関東〜」(地球環境研究センターニュース2020年2月号)をご参照ください。

8月下旬に1週間の予定で、FTIRのメンテナンスと今後運用を予定している新FTIRとの比較観測を行うために、陸別を訪問しました。この時期は、秋の気配が感じられるはずですが、木々の緑はまだまだ濃く今年の秋は先という感じでした。
今回の訪問では、残念ながら天候に恵まれず、更に台風が日本列島を縦断する予報となったため、8月26日と27日の2日間で実施できる作業を行って、予定を変更してつくばに戻ることにしました。

8月26日は、幸いにも少し晴れましたので、この訪問に合わせて持ってきた可搬型FTIR(EM27/SUN)を、銀河の森天文台の屋上に設置し、1時間ほど観測することができました。

写真1 銀河の森天文台の屋上に設置した可搬型FTIR(EM27/SUN)を用いて太陽光の観測を行っている様子。FTIRを操作しているのは、Matthias Max Frey特別研究員(10月末まで在籍)。屋上の床は、屋根防水補修工事を行っているため、アスファルト防水が剥がされています。
写真1 銀河の森天文台の屋上に設置した可搬型FTIR(EM27/SUN)を用いて太陽光の観測を行っている様子。FTIRを操作しているのは、Matthias Max Frey特別研究員(10月末まで在籍)。屋上の床は、屋根防水補修工事を行っているため、アスファルト防水が剥がされています。

ところで、銀河の森天文台は、1998年に開館後25年以上経過し、寒暖差の影響もあり、建物が老朽化し、雨漏りがひどく、応急処置を施しながら使用されてきました。この度、陸別町による外壁と屋根防水補修工事が5月10日から10月末までに行われました。工事は、観測ができるだけ中断しないように配慮頂きました。今回訪問したときは、工事の真っ最中で、屋上のこれまで使用されてきたアスファルト防水が剥がされているところでした。

写真2 銀河の森天文台の屋上の観測機器が設置されているところの工事の様子。真ん中の灰色の箱のようなものはエンクロージャで、この中に太陽追尾装置が設置されており、晴れているときはエンクロージャを開けて太陽追尾装置を使用して、太陽光を下の観測室のFTIRに導入します。左側の白色の観測機器は、スカイラジオメーターです。屋上の床の大部分は、アスファルト防水が剥がされています。スカイラジオメーターの床は、アスファルト防水を剥がす前でスカイラジオメーターを一度動かして、剥がします。
写真2 銀河の森天文台の屋上の観測機器が設置されているところの工事の様子。真ん中の灰色の箱のようなものはエンクロージャで、この中に太陽追尾装置が設置されており、晴れているときはエンクロージャを開けて太陽追尾装置を使用して、太陽光を下の観測室のFTIRに導入します。左側の白色の観測機器は、スカイラジオメーターです。屋上の床の大部分は、アスファルト防水が剥がされています。スカイラジオメーターの床は、アスファルト防水を剥がす前でスカイラジオメーターを一度動かして、剥がします。
写真3 銀河の森天文台の屋上の天文台ドーム側の様子。屋上の床はアスファルト防水が剥がされています。
写真3 銀河の森天文台の屋上の天文台ドーム側の様子。屋上の床はアスファルト防水が剥がされています。
写真4 銀河の森天文台の壁側の様子。足場が設置され、外壁が剥がされています。
写真4 銀河の森天文台の壁側の様子。足場が設置され、外壁が剥がされています。

この工事が終了しましたら、陸別は長い冬を迎えます。この様に、陸別町の銀河の森天文台での大気の観測は、町と地元の方の多大なご理解とご協力によって継続することができます。この観測によって貴重な長期データを取得し、NIESを初めとする国内外の研究者による環境研究に利用されています。

【連載】観測現場発 季節のたより 一覧ページへ