貴重な環境におかれるステーションでのエコスクール 令和6年度エコスクール・地球環境モニタリングステーション—落石岬見学会報告
1. はじめに
令和6年度の落石エコスクールは、6月4日(火)に、地元根室市の小学校にて開催され、根室市立落石小学校・海星小学校の5、6年生15名が参加しました。
このエコスクールは、北海道根室振興局の要請及び根室市の支援の下、6月の環境月間行事の一環として、人と環境との関わりや環境保全の重要性を地元の小学生に学んでもらうために開催されており、子どもたちや地域の方々に国立環境研究所(以下、国環研)が行っている活動がどのようなものかを知ってもらえる大切な機会となっています。
2. エコスクール当日
昨年と同様、落石岬にある地球環境モニタリングステーション(以下、ステーション)へ子どもたちと歩いて向かうことを予定しておりましたが、直前に周辺でのヒグマの目撃が相次ぎ、残念ながら現地見学会は中止となりました。
そのため、当日は教室での解説班とステーションからの実況班に分かれ、子どもたちには、教室で説明を聞いてもらいながら、中継映像を見てもらう形となりました。
笹川主幹研究員からのステーションの概要説明後、ステーション入り口から中継を開始。平らな草原と目の前に広がる海を大きく映し、自然のまっただ中にいることを伝えながら、建物の中へ移動。中に置かれている精密機械を一つ一つ見せながら、空気中の様々な成分が測定・分析されていることを説明していきます。実況する私たち以外がいないステーション内で、自動で動く機器がずらりと並ぶ、不思議な光景でした。内部の説明が一段落した後、建物屋上に上がり、PM2.5や紫外線などの屋外設置の観測装置と高さ50メートルにもなる巨大な観測タワーをバックに中継は終了。子どもたちは画面を凝視し、時にメモをとりながら、真剣に聞いてくれました。
次に実際に落石岬で観測された二酸化炭素(CO2)濃度のグラフを見ながらの説明がありました。CO2濃度の変動が植物の光合成と呼吸により、季節で変動がありつつ、年々増加していることを学びました。
最後に海水がCO2を吸収することを学ぶ実験を行いました。
まずBTB溶液(水溶液の性質を調べる試薬)により青色(アルカリ性)を示している海水が入った小瓶に、CO2が多く含まれた呼気を吹き込み20回ほど大きく振り混ぜると、海水は黄色(酸性)となります。これはCO2が海水に溶け込んだことを示し、その後、小瓶の蓋を開けて新鮮な空気と入れ替えた後、再度振り混ぜると海水は青色(アルカリ性)に戻り、CO2が海水から放出されたことが分かります。
先のグラフの説明や実験を見ながら、小学生の頃、植物の光合成と呼吸について、理科の授業で学んだことを思い出しました。地元の子どもたちにとって、植物と同じくらい身近であろう海で行われている現象を、実際に目に見える形で楽しみながら理解してもらえたら嬉しいなと思いつつ、今回のエコスクールの行程が終了となりました。
3. おわりに
私自身は普段、事務職員として仕事をしており、研究に直接携わる立場ではありません。ですが、今回初めてステーションに赴き、かつて購入の手続きをした機器が、研究の最前線で活躍していることを目の当たりにし、自身が日々行っている業務が、微力ながらも研究の一助になれていることを実感することができました。
エコスクールに参加してくれた子どもたちが環境や科学に興味を持ち、環境問題や科学に関わるような職業を選ぶきっかけになれば、また、将来どのような職業を選んだとしても、この経験を頭の片隅においてもらい、日常の何気ない瞬間に、あのきれいな落石の景色や環境に思いを馳せてもらえたら、国環研の職員として、とても嬉しく思います。
モニタリングステーションへの入り口にはゲートが設置されていました。とても錆びついていて年季の入ったものかと思いきや、数年前に交換したばかりと伺い、ステーションを取りまく自然の厳しさに驚くとともに、こうした過酷な環境で、モニタリングステーション事業を続けていくためには、多くの方々の協力が不可欠であることを実感しました。
新型コロナやヒグマの出没など、避けようのないトラブルが続くなか、エコスクールの開催のため、また日々の観測のためにご尽力いただいております北海道根室振興局、根室市ならびに地域の皆様に心より感謝申し上げます。