COLUMN2024年8月号 Vol. 35 No. 5(通巻405号)

地球環境豆知識(36) ブルーカーボン

  • 地球環境研究センターニュース編集局

「ブルーカーボン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。聞き覚えはあるけれどよくわかってない、という方も多いかもしれません。CGERニュース6月号で「ブルーカーボン」「グリーンカーボン」という単語が何度か出てきたので、この機会に簡単にご紹介します。

CGERニュース6月号「イノベーションを起こし社会実装につなげる-近藤雅征准教授に聞きました-」:https://cger.nies.go.jp/cgernews/202406/403001.html

図1 概念図
図1 概念図

地球上で排出されたCO2のうち、森林などの陸域生態系に吸収・貯留されるCO2を「グリーンカーボン」と呼びます。それに対して、海藻などの海洋生態系が吸収し、海中、海底のバイオマスやその下の土壌に吸収・貯留される炭素を「ブルーカーボン」と呼んでいます。2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書「Blue Carbon」において定義されました。

ブルーカーボンの主要な吸収源としては、藻場(海草・海藻)、干潟(湿地)、マングローブ林があげられ、これらは総称して「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。

海面では、大気との間でCO2を含む気体が吸収・放出され、海に溶け込んだCO2は海洋植物の光合成によって吸収されます。それらの死骸が海底に沈殿することで、炭素が固定化されます。また、炭素は、海洋内の食物連鎖によって魚などに捕食され、それらの死骸が海底に沈むことでも同じく固定化されます。

陸上の植物によって固定化された炭素は、数十年単位で微生物によって再び分解されてCO2として大気中に放出されます。一方、海底に蓄積された炭素は、無酸素状態のため微生物による分解が抑制されることで、その分解が数千年単位と非常にゆっくりとしたものとなります。
このような特徴から、ブルーカーボンは、地球温暖化の原因とされるCO2の新たな吸収源として注目されているのです。

一方で、UNEPの報告書によれば、ブルーカーボン生態系は年間平均で2~7%も減少を続けており、このままではその多くが今後20年の間に失われてしまうと言われています。そのため、さらなる保全・育成が世界規模で求められています。