REPORT2024年8月号 Vol. 35 No. 5(通巻405号)

日本地球惑星科学連合2024年大会参加報告

  • 藤縄環(地球システム領域地球大気化学研究室 主任研究員)

1. はじめに

日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union Meeting 2024: JpGU)2024年大会が2024年5月26日から31日にかけて開催されました。2022年大会以降、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響により、本会は千葉市幕張メッセの現地会場とオンラインを併用したハイブリッド形式での開催となっており、現地会場をライブ中継して行う口頭発表と、現地でのポスター発表およびフラッシュトークとe-posterでの発表が行われています。2024年大会の参加者は、Confitを利用したオンライン形式にも成熟してきており、遠方からの発表者が現地と同等の熱量を持って参加できている様子が見られました。

JpGUは地球惑星科学に関連する約50の国内学協会が参加する組織であり、毎年5月末ごろ開催される年会は200を超えるセッションからなり、学部生、院生などに加えて、小・中・高校生などの幅広い年齢層の参加者が、宇宙惑星科学、大気水圏科学、固体地学、地球生命科学などの分野において、白熱した討議を行う国内最大規模の学会です。

筆者は28日を除いて全日現地参加しており、現地での雰囲気などの紹介を交えつつ、毎年恒例となっている衛星観測センターのJpGU展示についてご報告します。

2. 幕張メッセ現地の様子

昨年大会は、新型コロナウィルス感染症対策の緩和直後の開催であったため、現地参加者が大幅に増え、現地での活気が戻りつつあることを実感する大会でしたが、2024年大会はさらに多くの人々が現地参加している印象で、コロナ禍前の熱気を彷彿とさせていました。JpGUメールニュースでの報告によると、本大会の参加登録者数は参加登録者数8,372名のうち現地来場者数は7,095名とのことで(2024年6月号No. 393)、前年と比較してそれぞれ6.3%増、22.3%増と、大幅増となりました。実際、参加者数はコロナ禍前の2019年大会の8,390名とほぼ同程度となり、筆者の現地の印象とも整合していました。筆者が参加したセッションの多くで、現地会場(100名以上が入る会議室)はほぼ満員となっており、一時立ち見者までいるほどの盛況ぶりでした。毎年現地開催でのポスター発表は幕張メッセの展示ホールにて行われますが(写真1)、こちらも昨年よりさらに多くの参加者が集い、セッション終了後にはポスター前で激論を交わす数多くの人の姿が見られました。

写真1 展示とポスター会場の様子。多くのポスターボード、展示が見られました。
写真1 展示とポスター会場の様子。多くのポスターボード、展示が見られました。

3. 衛星観測センター展示の様子

写真1のとおり、展示ホールではポスターボードの他に、各研究機関や大学、企業の展示ブースが手前のエリアに並んでいます。例年衛星観測センターの展示は、写真左手前のNASA-JAXAハイパーウォール講演会場の前の展示ブースに出展するようにしています(写真中央部の展示ブースです)。例年通り、ポスターや動画、パンフレットなどを通して、温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズのこれまでの成果を紹介しました(写真2)。また、GOSATシリーズのサイトQRコードを印刷したカードや、GOSAT-2プロジェクトロゴマーク入りの缶バッジなども同時配布しました。その他には、毎年好評を得ているGOSATシリーズプロジェクトメンバーへのインタビューとリクルート情報についてもポスター展示を行いました。

パブリックデーである5月26日(日)には、たくさんの中・高校生や学部生・院生、教員、企業の方々が来訪され、GOSATで観測したXCO2(CO2カラム平均濃度)やXCH4(CH4カラム平均濃度)の時系列マップポスターやインタビューポスターを興味深そうに眺めたり、我々展示ブース担当の説明を熱心に聞いたり、大変にぎわった様子でした。特に、中・高校生にはGOSAT-2ロゴマーク入り缶バッジの人気が良好で、みなさんに喜んでいただきました。また学部生・院生にはやはり衛星センター若手研究者へのインタビューポスターが大変人気で、筆者も学生の進路相談やどのような方がどのような経緯で研究者になったか、などについて説明をしました。なかには大変知識が豊富な来訪者もおり、驚かされることもありました。一方で、地球観測としては重要な温室効果ガスの観測衛星ですが、(以前から認識しておりましたが)あまり一般の方々には知られておらず、広報の重要性、とりわけ若年層を中心とした一般の方へのアウトリーチの重要性を再認識しました。

写真2 衛星観測センター展示ブースの様子。角のスペースを予約することで正面と横の2面を開くことができ、スペースの有効活用をして多くの展示ができました。
写真2 衛星観測センター展示ブースの様子。角のスペースを予約することで正面と横の2面を開くことができ、スペースの有効活用をして多くの展示ができました。

4. おわりに

コロナ禍以降、参加登録者、現地参加者ともに順調に回復しつつあり、本大会ではコロナ禍以前の活気を取り戻しつつあることを実感できました。また、ハイブリッド形式での開催のため、オンライン参加・現地参加のどちらの利点もあり、研究者への発表機会や、さまざまな分野における発表の聴講機会は今までよりも拡張されているかと思われます。今後ともこのような形式をより‘当たり前’にしていき、両者の長所がうまく活かされていくのが良いだろうと感じました。

また、GOSATシリーズについてより多くの方々に知って頂き、NIESの活動も含めて、これまでの成果と意義について、より広く世間に浸透していく活動が重要であると認識する良い機会でした。急激な少子高齢化の時代にあって、将来有望な若手育成の観点からは、特にこういった草の根運動に重点を置き、より広報に力を入れることが今後の中長期的な質の良い若手研究者の確保に結びつくのだろうと思います。普段理解はしているが、なかなか具体的な行動に移せていなかった筆者としては、そういったことを再認識できる良い機会になりました。