REPORT2023年8月号 Vol. 34 No. 5(通巻393号)

日本地球惑星科学連合2023年大会参加報告 ~現地参加者が戻ってきた展示会場より~

  • 野田響(地球システム領域衛星観測研究室 主任研究員)

1. はじめに

日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union Meeting 2023: JpGU)2023年大会が2023年5月21日から26日にかけて開催された。JpGUは地球惑星科学に関する学会など51の学協会が参加し、会員数約1万以上にのぼる大規模な学術団体である。年に1回開催される大会では、宇宙惑星科学、大気水圏科学、地球人間圏科学、固体地球科学、地球生命科学、さらには教育・アウトリーチまで含む幅広い分野について、分野別のセッションや分野間連携によるセッションが並行して多数開催されるのが特徴である。

今年の大会は昨年の2022年同様、千葉市幕張メッセの現地会場とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催された。今回は5月8日に新型コロナウイルス感染症の対策が緩和された直後であったこともあり、コロナ禍前と同じ水準とまではいかないまでも、現地参加者が昨年よりも大幅に増え、口頭発表会場やポスターセッション会場などで久しぶりの再会を喜ぶ場面や、対面での白熱した議論を楽しむ様子が連日見られた。

2. 衛星観測センターの展示

ポスター会場の展示ホールに展示会場が併設され、研究機関や大学、企業などの展示ブースが多数設置された(写真1)。国立環境研究所からは衛星観測センターが出展した。衛星観測センターの展示では、温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズについて、2009年のGOSAT打ち上げから現在に至るまでの長期の観測から得られた成果の紹介に加え、2024年度に打ち上げ予定の新たな衛星GOSAT-GWについてポスターや動画で紹介し(写真2)、関連パンフレットやGOSAT-2プロジェクトロゴマーク入りのマグネットなどを配布した。

さらに、毎年JpGU大会での展示で好評を博しているGOSATシリーズプロジェクト若手研究者へのインタビューとリクルート情報をポップにまとめたポスターを展示した(昨年度の同ポスターについては、佐伯田鶴「温室効果ガスの衛星観測と循環研究の動向 ~日本地球惑星科学連合2022年大会参加報告~」地球環境研究センターニュース2022年10月号 を参照のこと)。

写真1 大会参加者で賑わうJpGU2023の展示会場の様子。衛星観測センターの展示ブースにも多くの来訪者があり、熱心に説明を聞いていた。
写真1 大会参加者で賑わうJpGU2023の展示会場の様子。衛星観測センターの展示ブースにも多くの来訪者があり、熱心に説明を聞いていた。
写真2 展示した動画のキャプチャー画面。CG映像でGOSATシリーズの観測方式や軌道の違いを説明した。
写真2 展示した動画のキャプチャー画面。CG映像でGOSATシリーズの観測方式や軌道の違いを説明した。

大会初日となる5月21日(日)はJpGU会員以外でも参加可能なパブリックデーが開催されており、当日はこれに参加した中学生や高校生が数多く衛星観測センターの展示を訪れた。中には驚くほど鋭い質問をする高校生もおり、地球観測や気候変動問題についての若い世代の関心の高さを感じた。

全日程を通じて、展示ブースには大学の学部生から院生、様々な分野の研究者、展示参加企業の方など、多様な参加者が次々と来訪し、GOSATシリーズが宇宙から大気中の温室効果ガスの濃度を観測する手法の詳細や、GOSATやGOSAT-2とGOSAT-GWの違いなど質問が相次いだ。また、若手研究者へのインタビューのポスターを見た学生や若手参加者から、研究者として将来のキャリアパスについて相談される場面もあった。

3. おわりに

2020年から昨年までのJpGU大会ではオンラインのみの展示だった。オンラインのみの展示では、クイズラリーや展示紹介セッションに参加したり、オンラインブース上に来訪者と研究者が話せるzoom窓口を開設したりと様々な工夫を図ってきたものの、参加者の反応が見えず、もどかしい思いをしていた。今回の現地展示では、学生から専門家まで幅広い参加者の反応を見ることができ、これらの経験は今後のアウトリーチ活動に活かしていきたいと思う。

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JpGUメールニュースでの報告によると、参加登録者数7,876名のうち現地来場者数は5,802名(2023年6月号 No.380 2023年6月14日)。コロナ禍前の2019年の参加者は8,390名(2019年6月号 No.324 2019年6月10日)。2022年は参加登録者数が6,789名、うち現地来場者数は3,152名(2022年6月号 No.368 2022年6月10日)だった。