YouTube企画「子どもオンライン相談@地球温暖化編」を公開しました
1. はじめに
地球温暖化に関する小学生からの疑問に答える動画シリーズ「子どもオンライン相談@地球温暖化編」。これまでに4本を国環研YouTubeチャンネルで公開しました。
答えるのは、温暖化ハカセこと江守正多・地球システム領域上級主席研究員(前副領域長)。
子どもたちからの率直な疑問に、江守さんはどう答えた? そして、答えを聞いた子どもたちの反応は? 子どもとのやり取りを楽しむとともに、子どもたちの目線から温暖化問題を考える、そんな動画になっています。
シリーズ①②は、SNS等での募集に応じてくれた中から、小学4年生の「あーちゃん」と3年生の「みずちゃん」が登場。
シリーズ③④は、横浜市立品濃(しなの)小学校の6年1組とコラボした特別編。クラスの全児童が4グループに分かれ、質問を投げかけました。
本記事では動画の一部内容を紹介します。
2. シリーズ①あーちゃん編
小4のあーちゃんは、「地球の平均気温が上がるとどうなりますか?」とストレートに疑問をぶつけてくれました。
江守さんは「“平均”とついているのがいいですよね」と、日々の気温の上がり下がりではなく、地球全体の気温が上がるとどうなるかに注目してくれたことに反応しつつ、温暖化による影響をいくつか説明しました。
影響の一つ、海面上昇の話を聞いたあーちゃんは、「人が住んでいるところに水がたまると住めなくなると思うんですが、それはないんですか?」とさらに質問。江守さんは、「海の近くの低い土地に住んでいる人は将来、住めなくなっちゃうかもしれない」とリスクを伝えたうえで、日本でも今後、大雨や台風で浸水のリスクが増えると予測されることから、「避難しなくちゃいけないときには避難するとか、防災バッグを準備しておくことが大事」と、備えの重要性についても話しました。
3. シリーズ②みずちゃん編
②に登場した小3のみずちゃんは、「温暖化を止めるために小学生にもできることは?」と質問してくれました。
江守さんは、「自分が使っているエネルギーを、二酸化炭素(CO2)を出さないものにするのが大事」と説明し、「学校でこういう話はしますか?」と問いかけると、「あんまりしないです」とみずちゃん。江守さんはさらに、「たとえばね、学校の電気は何で作っているのかを先生に聞いてみたり、太陽光発電の電気じゃなかったら、そっちの方がいいじゃないですかと話をしてみるとかね」と、学校で話題にしたり、学校の電気を再エネでつくるよう働きかけるのも小学生にできることの一つだと提案しました。
「どう?やれそう?」という問いかけに、「はい、やってみたいと思います!」とお返事が。身近な取り組みだけでなく、“社会を変えるために”できることは何か。江守さんが日ごろから伝えているメッセージを、受け止めてもらうことができました。
オンラインでの対話を終えて、江守さんは「僕なりに一生懸命考えながら答えたので、何かが伝わっていたらいいなと思います」と、若い二人に希望を託していました。
4. シリーズ③横浜市立品濃小学校6年1組コラボ編[前編]
江守さんにぜひ質問したいとラブコールを送ってくれたのが、横浜市立品濃小学校6年1組の皆さん。地球温暖化にとどまらず、プラスチック問題や、持続可能な開発目標(SDGs)、国立環境研究所のことなど多岐にわたる質問を寄せてくれましたが、時間の限りもあり、やむなく厳選してもらうことに。収録時には、4つのグループに分かれて江守さんとやり取りしました。
シリーズ③では、前半2グループが登場。
最初の<温暖化対策チーム>は、「これって間違っているんじゃないかと思う温暖化対策はありますか?」と質問し、江守さんが「難しい質問ですね」と苦笑い。
原子力発電を例に、温暖化対策として原発を使うのは良くないという意見と、うまく管理して使うことは大事だという意見があり、人によって意見が違うことから「みなさんも、いろんな人の意見を聞いて、自分はどう考えるか意見を持ってもらうことが大事」と伝えました。
続く<海の食チーム>からは、温暖化で海水温が上昇することで魚にどんな影響が出るのかという質問でした。
捕れる量や種類の変化だけでなく、「漁師の人はどうなってしまうんですか?」と仕事に影響が出ることへの心配も。江守さんは「すごく大事な点だと思います」と受け止めたうえで、「魚が捕れなくなって収入が少なくなることもあるし、遠くに行かないと捕れなくなることも。船で遠くまで行かなくちゃいけなくなると、燃料もかかるしCO2も余分に出る」と、心配される点を具体的に挙げました。
5. シリーズ④横浜市立品濃小学校6年1組コラボ編[後編]
④では、後半2グループが登場。
<Cチャンネルチーム>は、温暖化で“食”への影響が出る懸念から、「今後、昆虫食が流通して、虫を食べることになるんですか?」と心配そうに質問してくれました。
「どうですか、皆さんは食べたいですか?」と江守さんに問われると、クラス全体がざわざわとし、「食べないと死ぬんだったら…」と消極的な声も。これに対して江守さんは「昆虫も、おいしい料理のしかたをすれば、みんな食べるんじゃないかなと思っています」と個人的な考えを伝えましたが、多くの児童はなおも半信半疑な様子でした。
最後の<DIOチーム>からは、「CO2をコンクリート製品に活用する技術開発があるそうですが、実現可能だと思いますか?」と、高度な質問が飛び出しました。
江守さんは、「難しいことを調べてくれましたね」と驚きつつ、実際にCO2を原料にしてプラスチックのようなものを作る研究や、CO2を吸収して地中に封じ込める技術開発が進んでいることを紹介しました。一方で、「減らせるんだから出してもいいと思っちゃうと、それは違う。化石燃料を燃やすのもやめて、出してしまったCO2は技術的に吸収したり、利用したりする。両方をやらなくちゃいけない」と、CO2削減の重要性も強調しました。
各グループからの質問を受け止めた江守さんは、「これからいろいろ勉強していったり、将来大きくなったら何になろうかを考えたりするきっかけに、ちょっとでもなってくれたらうれしいなと思います」とエールを送りました。
6. おわりに
小学生からの質問といえど、大人も同じように疑問に思っている内容も多く、企画した私たちも子どもたちと一緒に地球温暖化の理解を深める機会になりました。また、将来昆虫食が主流になったり、これまで食べている魚が捕れなくなる懸念など、未来の自分たちの生活を想像しながら質問してくれたことも印象的でした。
地球温暖化は未来世代に大きな影響を与える問題であり、これから大人になる小学生たちが、この問題にしっかりと向き合ってくれたことを頼もしく思います。