最近の研究成果 メタン発生源である水田の広域マッピング手法の開発
我々は水田から食料供給のみならず生物多様性や景観の保全、文化の伝承など様々な恩恵を受けています。一方で、水田は、二酸化炭素に次いで地球温暖化への寄与が大きな温室効果ガスであるメタンの重要な人為発生源です。そのため、食料や水資源の問題はもちろんのこと、地球温暖化の問題に取り組む上でも、広域における水田の分布や状態を正確に把握する必要があります。
本研究では、衛星画像を用いた広域水田マッピング手法を開発し、2018年の日本全域における空間分解能30 mの水田マップを作成しました。特徴の異なる2種類の衛星画像を使用することで(図1中、Sentinel-1とSentinel-2)、雲の影響によるデータ欠損を防ぎ、水稲に特有な栽培期間中の湛水の有無をより正確に抽出することができました。また、今回作成した水田マップでは既存の衛星画像を基に作成された水田マップと比較して、各都府県における実際の合計水田面積をより高い精度で再現することができました。
日本国外では二期作や三期作、浮稲栽培や陸稲栽培など多種多様な方法で稲作が行われています。今後は日本国外の地域でも本手法の有効性を検証することで、より広範囲の水田マップの作成に取り組んでいきます。
本研究は、(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費課題2-1710「メタンの合理的排出削減に資する東アジアの起源別収支監視と評価システムの構築」(代表:伊藤昭彦)の一環として行われました。