2018年9月号 [Vol.29 No.6] 通巻第333号 201809_333004
最近の研究成果 貨物船を用いた太平洋上の大気中の酸素と二酸化炭素濃度の連続観測
日本と北米の間を定期運行する貨物船(New Century 2、鹿児島船舶所有、写真)に大気中の酸素および二酸化炭素濃度の連続測定装置を搭載し、2015年12月から船上観測を始めました。これまで酸素に関しては1航海につき北米西海岸行きの場合は7地点、東海岸行きの場合は14地点でのボトルサンプリングを実施していましたが、連続観測の実現により観測領域が大幅に広がりました。
大気中の酸素濃度の変化を検出するためには高精度の分析手法が要求され、通常そのために高圧容器に充填した標準ガスが大量に必要となります。しかし、高圧容器の積み下ろしにはコストや手間がかかるため、標準ガスの消費を抑えた低流量型の連続観測装置を開発しました。約1年間の観測の結果、北太平洋の広い範囲での酸素と二酸化炭素濃度の季節変化を捉えることができました(図)。特に、APO(Atmospheric Potential Oxygen;陸域生物圏の影響を除いた酸素)の海洋成分の季節振幅は緯度方向(南北方向)には変化が見られていたのに対し、経度方向(東西方向)には変化が小さいことを新たに確認しました。このことは、北太平洋における春・夏の生物生産や秋・冬の海洋鉛直混合の程度が経度方向には変化が小さいことを示唆するものです。今後、観測の継続により炭素循環に関する情報や大気-海洋間のガス交換に関するより詳細な情報を得ることが期待されます。
本研究の論文情報
- In situ observation of atmospheric oxygen and carbon dioxide in the North Pacific using a cargo ship
- 著者: Hoshina Y., Tohjima Y., Katsumata K., Machida T., Nakaoka S.
- 掲載誌: Atmos. Chem. Phys., 18, 9283–9295, doi.org/10.5194/acp-18-9283-2018.