Special Feature: Integrated Climate Assessment - Risks, Uncertainties and Society (ICA-RUS), Sustainability Science
https://link.springer.com/journal/11625/topicalCollection/AC_a6b02fabfcb9be18566845b7cedef2c7

環境研究総合推進費S-10として2012-2016年度に行われたICA-RUSプロジェクトの成果から7本の論文をまとめたSustainability Science誌の特集号が出版された。ICA-RUSプロジェクトでは、地球規模で長期の気候変動に伴う影響と対策のリスクを総合的に検討した。地球環境研究センターからは、江守正多（ICA-RUSプロジェクトリーダー）と山形与志樹を主著とする論文が掲載されている。

気候長期目標のリスク的含意：ICA-RUSプロジェクトの成果まとめ（Risk implications of long-term global climate goals: overall conclusions of the ICA-RUS project）江守正多ほか

世界平均気温の上昇を産業化以前を基準として1.5°C、2.0°C、2.5°C未満に抑制することを目指した場合の、気候変動リスクおよび対策に伴うリスクを総合的に検討している。気候予測の不確実性を考慮すると、パリ協定の排出目標である「今世紀後半に世界の温室効果ガス排出正味ゼロ」を社会が目指すことが実際的であり、それでも気温上昇が目標を超える可能性が生じた場合には、気温上昇の受容、緩和の強化、気候工学の3つの選択肢が残されると指摘している。

負の排出シナリオにおける水、食料、生態系トレードオフの評価（Estimating water–food–ecosystem trade-offs for the global negative emission scenario (IPCC-RCP2.6)）山形与志樹ほか

温室効果ガスを大幅に削減するシナリオにおいて大量な導入が仮定されることの多いバイオエネルギーCCS​（BECCS）に代表される負の排出技術が水、食糧、生態系の持続可能性とどのようにトレードオフするかを評価している。土地をめぐる競合を通じて、食料安全保障、水安全保障、生態系サービスへのリスクが懸念されるため、BECCSの導入には慎重な土地利用政策が必要であると結論している。