2016年9月号 [Vol.27 No.6] 通巻第309号 201609_309006

地球温暖化研究棟に新たな太陽光パネルが設置されました —建物修繕による防水工事にともなって—

  • 地球環境研究センター 主幹 井桁正昭

ここ国立環境研究所地球環境研究センターがある地球温暖化研究棟(4,900m2、3階建て、RC構造)は平成13年3月に竣工されました。当時は、当研究所が環境省の附属等機関から独立行政法人となる大きな転換期でした。その新たな出発と同時にできたこの建物は、国土交通省官庁営繕部で推進する「環境負荷低減に配慮した官庁施設」として地球環境配慮型設計に基づいて建設され、様々な先端技術が盛り込まれております。たとえば、自然の光や風を最大限利活用する機能として、窓面等建物開口部においては、一定の温度になるとガラスが白濁し、夏季の強い日射を遮断する白濁ガラスや、複層ガラスの内側に特殊な金属膜を設けたLow-e複層ガラスの導入、自然の風を取り込み、廊下の換気穴などを通じて空気を流し、最後は屋上の排煙窓から排出する屋内通風、ベランダには直射日射を遮断するルーバー型庇の設置、太陽光高反射塗料を使用した外壁等、光と風と熱を制御する様々な地球環境保全手法を擁しています。

この建物を利用して、環境省地球環境研究推進費の「環境低減型オフィスビルにおける地球・地域環境負荷低減効果の検証」が採択され、共同研究プロジェクトとして3カ年間実施されました。
https://www.env.go.jp/earth/suishinhi/wise/j/J03B5600.htm

竣工当時、建物の屋上には、熱収支の改善のための屋上緑化と太陽光発電システムがありましたが、外来の樹木等が侵入して屋上植栽部に根が深く張られてしまい、棟全体の屋根としての屋上防水に支障が生じるおそれも出てきたことから、屋上に設置されていた屋上緑化と効率の悪くなった太陽発電システムを取り除き、防水工事を施した後、新たな太陽光パネルを設置いたしました。

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写真1今回設置した太陽光パネル。モジュールの形が四角くなっています。以前のモジュールは円形でした

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写真2屋上緑化していた部分(写真左側)にも太陽光パネルを設置しました

以前の太陽光パネルは1枚当たり出力50w、それが180枚あり、最大9kwの発電が可能でしたが、今回の設置では1枚当たり出力265wのパネルを以前の1.4倍の246枚設置することにより、約7.2倍の最大65Kw以上の出力を得ることが可能となりました。設置面積の拡大と技術開発による製品の変換効率の向上に伴い、太陽光発電システムで発電された電力は、この地球温暖化研究棟の各種電気設備に利用され、再生可能エネルギーとして大いに貢献しています。

当時はまだ普及していなかった太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー施設は、今では家庭や企業、公共施設や大小規模施設等、生活の様々な場面で見かけるようになりました。それら設置の促進や拡充を図るため、国や地方公共団体からの補助金や助成金制度も充実してきており、日本では太陽光パネル設置は当たり前になりつつありますが、設置された後の当該施設の維持管理に伴う費用負担が問題だと考えます。この度は建物改修の一環で太陽光発電システムも改修することができましたが、設置するのと同様、施設を維持、管理し続けること、また施設とともに環境配慮に対する意識を継続することは、大変難しいことであることがわかりました。現実的には直面する家計や設備投資など維持管理に関する費用捻出が一番の問題になっているのではないかと思い、それにより環境配慮に対する意識を断念せざるを得ないことになるのではないかと懸念しております。我々はつい、新しいもの目を向けがちです。研究とは少々離れますが、世間一般において環境に配慮する取り組みを陳腐化させず、人々に力強く意識してもらい、持続可能な社会を実現するための行動を継続してもらうための方策もまた肝要なのではないか思います。

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