2016年4月号 [Vol.27 No.1] 通巻第304号 201604_304007
温暖化と人工衛星を身近に学ぶ第一歩! —小学校で「温室効果体験教室」を開催—
2016年2月8日(月)、国際会議場近くのつくば市立竹園西小学校において「温室効果体験教室」を開催しました。GOSATプロジェクト・アウトリーチ活動強化の一つとして、小学2年生約140人を対象に、7歳になった人工衛星「いぶき」(GOSAT)、宇宙からの観測の意義、地球温暖化のメカニズム等を、横田達也・衛星観測研究室長と千田昌子・高度技能専門員が「いぶき博士」となって易しく解説しました。
午前10時半、全員が会場の「なかよしルーム」に揃うと、司会の合図で児童たちが「はかせー!!!」と元気に呼びかけます。その声に応えて、白衣も凛々しく2人が登場、スライドを使ってロケットと人工衛星の違い、2009年の打上げとその後地球を周回する「いぶき」の様子、地球を包む大気という毛布が地表面で反射した太陽光の熱を溜めること、その影響と考えられる環境変化が北極の白熊にまで及んでいること、さらに人間の住む場所でも旱魃や洪水が増えていると思われること、生物の棲息域にも変化が観察されていること、等を説明しました。そして、「だからこそ、『いぶき』がその原因となるガスの濃さをはかり続けています」と締めくくりました。低学年ではありましたが、児童たちは熱心に衛星観測や地球温暖化の話に聞き入り、博士たちの問いかけにも元気に手があがりました(写真1)。
「いぶき」の解説を聞いたら、次はペーパークラフトに挑戦です。教室に戻り、厚紙に印刷された「いぶき」(本体および太陽電池パドル2枚)をハサミで切りぬいた後、折り・のりづけ・差込み・ストローの装着という、沢山の工程を踏んで完成させるものです(写真2)。小学2年生にとっては大変な作業です。糊がない、ハサミを忘れました、ストローが通りません……どのクラスでも先生は大忙しです。完成後、作品を先生に見ていただき、合格したらGOSATイベント認定書(図1)としろくま君ハンカチが貰えるという約束もあって、みな熱心に取り組んでいました。
児童たちがペーパークラフトに取り組んでいる間、並行して博士たちはメイン・イベントの準備を進めます。30人程が入れる大きなポリ袋を「大気」、袋の中に入る児童たちを「地球」(太陽光を反射し、自らも熱を発するもの)にそれぞれ見立てて、「温室効果」を実感してもらおうという大掛かりな実験です。この実験は「平成18年度 科学的な思考に沿った環境実験プログラムの開発業務事業報告書」中の「温室効果体験」に基づいています。
ペーパークラフトを作りおえて集まってきた児童たちを、博士たちが袋の中に誘導します。児童たちは「大気」の中で温室効果メカニズムのおさらいをしますが、興奮した児童たちの熱気と体温で少しずつ内部の温度が上がっていきます。冬のことですので耐えられない程暑くはなりませんが、元気な児童たちは外に出たくてウズウズし始めます。「さぁ、カウントダウンするから、ゼロになったら温室効果ガスの毛布を突き破って外に出よう!」児童たちの興奮はピークに達し、みんなが一斉に「大気」であるポリ袋を破き始めます。袋の外の空気のなんとすがすがしいこと!(写真3)
当初2回の予定だった実験は、希望者が多かったため3回実施され、ほとんどの児童に温室効果メカニズムを体験してもらうことができました。体験を終えた児童たちにはCGERの力作「ぱたぱた着せ替え絵本」も見てもらいました。こちらも人気を集め、入手の問合せが相次ぎました。頭にパドル・カチューシャ(写真4)を着けての「人工衛星なりきり記念撮影」も大変好評でした。
人工衛星「いぶき」の名前や役割を知ってもらい、温暖化などの地球環境問題に興味を持ってもらうことを目的とした今回の体験教室。最後に、児童から博士たちへのお礼の時間を主任先生が作って下さいました。先生が「みんな、この人工衛星の名前は?」と問いかけると、驚くほど大きな声で「いぶき!」と答えてくれた児童たち。その笑顔に、次の体験教室につながる確かな手応えを感じました。
今回のイベントで使用したペーパークラフトについては、今後GOSATの子ども向けサイト「GOSAT KIDS」(http://www.gosat.nies.go.jp/jp/kids/) に掲載する予定です。