2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号 201602_303012

オフィス活動紹介:温室効果ガスインベントリオフィス(GIO) 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)が扱う統計データ類

温室効果ガス排出量は図1に示すように、様々な統計データに基づく「活動量」に単位当たりの排出量である「排出係数」をかけることにより算出され、さらに「地球温暖化係数(GWP)」をかけることによりCO2換算として算出されている。

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温室効果ガス排出量の一般的な算定方法

「活動量」に用いられる統計データ類はGIOで保管されている。その形態は冊子であったり、PDFなどとして電子的に保管されていたりする。冊子に関してはGIOの室内の書棚に保管されており、その一角は書籍が並んだ図書室のようである(写真)。

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写真GIOのオフィスに保管されている統計類

日本の温室効果ガス排出量を算定する際に最も重要な統計は、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」であり、日本のエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出量を計算するもととなっている。この統計に関しては、伊藤洋「オフィス活動紹介—温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)—温室効果ガスインベントリの作り方〜総合エネルギー統計〜」地球環境研究センターニュース2010年11月号で記述しているので、そちらを参照されたい。

さて、農業分野では、牛などのげっぷや家畜のふん尿を処理する際に温室効果ガスのメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)が排出されている。この排出源の算定には、牛、豚、鶏などの家畜頭数が必要である。その際には、それらのデータがまとめられている農林水産省発行の「畜産統計」のデータを利用している。また、牛といっても、ひとくくりにはできない。乳用牛と肉用牛は種や体重など特性が大きく異なっている。例えば、日本国内における主な乳用牛は白地に黒斑点でなじみのあるホルスタインであるのに対し、主な肉用牛は黒毛や褐毛の和牛と呼ばれる種類の牛である。そのため、乳用牛と肉用牛では計算式が大きく異なってくる。さらに、成牛と子牛では食べるえさの量やふん尿の量なども変わってくる。「畜産統計」には乳用牛と肉用牛の頭数は別に記載されているとともに、牛の年齢別の頭数データも収められている。排出量はそのデータを利用し、細分化して計算されているのである。

また、廃棄物分野では、廃棄物を埋め立てる際にCH4が発生する。埋め立てる廃棄物が食物くずなのか、紙くずなのか、木くずなのかといった違いにより含まれている有機物の分解の速度が変わってくるため、CH4の排出量も変わってくる。それらの埋立量が掲載されているのが、環境省の「廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量調査報告書」である。この統計(報告書)では、どのような廃棄物がどこでどのように処理されるかといったことがまとめられている。

GIOが利用する統計は農林水産省「畜産統計」や環境省「廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量調査報告書」のように、主に各省庁(政府)の発行する統計類をベースとしている(表)。しかし、一部の特定の排出量を計算するときに、国の作成する統計ではどうしても得られないデータが必要となってくる(例:特定の工場のデータなど)。そのようなデータに関しては、関係団体や一般企業などに、直接、データの提供依頼をして、収集をおこなっている。

このように、温室効果ガス排出量は各省庁が作成する統計データ類に特定のデータを持っている関係団体や一般企業の協力で得られたデータが加わることにより、緻密に計算されているのである。

温室効果ガス排出量の計算に必要な主要統計データと使用データ

主要な統計データ 使用データ 統計データ作成省庁
廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査報告書 廃棄物焼却量、廃棄物埋立量など 環境省
総合エネルギー統計 化石燃料の消費量など 経済産業省(資源エネルギー庁)
自動車輸送統計 自動車走行量など 国土交通省
畜産統計 家畜頭数(種類別、年齢別)など 農林水産省

(文責:酒井広平)

目次:2016年2・3月号 [Vol.26 No.11] 通巻第303号

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