2014年12月号 [Vol.25 No.9] 通巻第289号 201412_289008
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 12 低炭素社会(その1) —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問33中国、日本、アメリカ、インドにおける一人当たりエネルギー起源CO2排出量(2007年)の大きさについて、左から大きい順番に並べたものとして、最も適切なものはどれか?
中級レベル
正答率 73%
- ① アメリカ > 中国 > 日本 > インド
- ② アメリカ > 日本 > 中国 > インド
- ③ 日本 > アメリカ > インド > 中国
- ④ 中国 > アメリカ > インド > 日本
- ヒント
- この4か国では、一人当たりGDPが大きく関係してきます。
- 答えと解説
-
答え: ②
この設問は国の総排出量ではなく、国の総排出量をその国の人口で割った一人当たりの排出量を問う設問となっております。つまり、国の総排出量は大きくても人口が多く、エネルギー消費が小さい生活をしている国は、一人当たりの排出量は小さくなります。逆に、エネルギー消費が大きい生活をしている国は一人当たりの排出量が大きくなります。一人当たりの排出量は、2007年時点で、アメリカ19.1トンCO2/人、日本9.7トンCO2/人、中国4.6トンCO2/人、インド1.2トンCO2/人でした。世界の平均が4.4トンCO2/人であり、日本は世界平均の2倍以上エネルギーを消費して生活しているとも言えます。
国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が、世界各国のエネルギー起源CO2排出量をとりまとめ、発表しており、この設問はIEAのデータを基にしております。なお、IEAが公表している排出量はエネルギー起源のCO2排出量であり、CO2以外のガスつまりCH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6といったガスは含まれていないなど、IEAのデータと京都議定書の下で公表されている温室効果ガス排出量データを比較したりする際には注意が必要です。
問34トップランナー方式の説明として、最も適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 86%
- ① ある時点の市場にでている最も省エネ性能の優れた製品を基準としている
- ② 産業部門の排出量削減の特効薬と考えられている
- ③ 地球温暖化対策推進法で指定されている
- ④ 現時点で指定機器のエネルギー効率改善状況は全く把握されていない
- ヒント
- トップランナー方式は省エネルギー法で指定されており、エネルギー効率改善状況は随時確認されています。排出量削減効果は緩やかです。
- 答えと解説
-
答え: ①
トップランナー方式は、省エネ法で指定された家電・自動車などの製品のエネルギー消費効率に関して、その時点で最も省エネ性能がすぐれたもの(トップランナー)を基準として目標を設定する方法です。目標達成状況は資源エネルギー庁により調査が行われ確認されています。その結果、1998年の制度導入後、多くの機器で大幅な効率改善が確認されています。例えば、電気冷蔵庫は1998年から2004年度までにエネルギー消費効率が55.2%改善されました。これは、年間消費電力量が半分以下になったということを示しています。
このトップランナー方式では、運輸・民生(業務・家庭)部門の機器を対象としています。また、販売している製品が対象となっており、市中に蓄積されている機器の効率を緩やかに改善していくため、排出量削減の効果も緩やかです。選択肢②のように産業部門の排出に対して、大幅に削減する効果はなく、効果は緩やかであるため、特効薬とはなりません。
問35この図は、旅客輸送手段ごとの、走行距離1km・一人当たりのCO2排出量を比較したものである。【A】〜【D】の組み合わせとして、最も適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 89%
- ① A:航空、B:鉄道、C:自家用乗用車、D:バス
- ② A:バス、B:自家用乗用車、C:鉄道、D:航空
- ③ A:鉄道、B:バス、C:航空、D:自家用乗用車
- ④ A:自家用乗用車、B:航空、C:バス、D:鉄道

- ヒント
- 一般的に公共交通機関は輸送効率が良く、電気を使いレール上を走行する鉄道はエネルギー効率のよい乗り物になります。
- 答えと解説
-
答え: ④
この設問の図では、1人の人間を1km運ぶ際に(使用した燃料などから)どれだけCO2が排出されたかを示している図です。つまり、図内【A】の乗物であれば、1人の人間を1km運ぶ際に使用した燃料からのCO2排出量が173g-CO2であるのに対し、図内【D】の乗物は1人の人間を1km運ぶ際に使用した燃料からのCO2排出量が19g-CO2という少ない排出量であることを示しております。多数の人間を乗せる輸送手段、バス、鉄道、航空は、自家用乗車に比べて一人当たりのCO2排出量が抑えられます。また、ジェット燃料等の大量の燃料を必要とする航空よりもバス、さらに電気で駆動する電車がよりCO2排出量の少ない移動を可能としております。
問36燃料電池の説明として、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 86%
- ① 燃料である水素と大気中の酸素を反応させて電気エネルギーを得るものである
- ② 燃料電池自動車は、電気自動車に比べ、安価であることから、広く普及している
- ③ メタノールや天然ガスから、改質器で、水素ガスを取り出すこともある
- ④ 水の電気分解の逆反応であるから、直流電力を発生する
- ヒント
- 2014年は、国内メーカーから燃料電池自動車が一般販売されることが発表された年でしたが、一般的にはまだまだ高価です。
- 答えと解説
-
答え: ②
燃料電池は、水素を燃料として、空気中の酸素と反応させることで電気を発生する発電装置であり、発生した電力は直流となります。燃料となる水素は、風力発電などの電気を使って水の電気分解で取り出したり、天然ガス、灯油、メタノールなどを改質することで取り出します。家庭用・産業用の燃料電池は、熱も活用できるためコジェネレーションとなります。
なお、燃料電池自動車は、一般的な自動車と比べて非常に高価であるため、広い普及には至っていません。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集
低炭素社会については、「低炭素社会に向けた全球的な挑戦 『低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)』第6回年次会合報告」でも紹介しています。