グローバル拡張

グローバルサプライチェーンを考慮した環境負荷原単位

3EIDの「データファイル」ページで提供する輸入品を含む環境負荷原単位((I-A)-1型)は,わが国の財やサービスの提供において原材料や部品等として使用される輸入品に付随する環境負荷量を含んでいます。しかし,この原単位は輸入品の生産に伴う環境負荷を同種の国産品のそれと同等と見なして推計する,いわゆる国産技術仮定に基づく計算を行っています。そのため,国産技術仮定は輸入品に関する環境負荷のデータを収集する必要がなく,推計に掛るコストや人的負荷が少ないという利点がありますが,その一方で,輸入品と国産品の生産プロセスが大きく異なる場合,輸入品の実態的な環境負荷とはかなり乖離した推計となり,原単位の過大評価や過小評価につながることが懸念されます。

この「グローバル拡張」ページでは,Global link input-output (GLIO) モデル*を用いて推計したグローバルサプライチェーンを考慮した環境負荷原単位(グローバル環境負荷原単位)を紹介いたします。グローバル環境負荷原単位では,3EIDのシステム境界を日本国内から世界231の国や地域を含むグローバルなシステム境界へと拡張し,輸入品の利用に伴う環境負荷を輸入先の技術的特性を可能な限り反映した計算を行っています。すなわち, 従来の国産技術仮定による原単位((I-A)-1型)と比較し,わが国の財やサービスが世界各国に広がるサプライチェーンを通じて国内外で発生している環境負荷量をより実態的に捉えた原単位となっています。

GLIOモデルによるグローバル環境負荷原単位は,以下の論文の補助資料(Supporting Information)として電子データとして公開されています。論文,補助資料とも無償でダウンロードすることができます。原単位の特性をご理解いただいた上でLCAやカーボン/環境フットプリント等の環境負荷の”見える化”にご利用いただければ幸いです。

* Keisuke Nansai, Yasushi Kondo, Shigemi Kagawa , Sangwon Suh , Kenichi Nakajima, Rokuta Inaba, and Susumu Tohno (2012), Estimates of Embodied Global Energy and Air-Emission Intensities of Japanese Products for Building a Japanese Input-Output Life Cycle Assessment Database with a Global System Boundary, Environmental Science & Technology, 46(16), 9146-9154.

推計方法と使用データ

GLIOモデルによる原単位の推計方法および使用データについては,論文(英文)内の「METHODS AND DATA」をご参照ください。

環境負荷原単位の仕様

対象年: 2005年
基準価格: 生産者価格
部門数: 日本の国産品406部門
環境負荷の種類: エネルギー消費,GHG排出量(CO2, CH4, N2O, PFCS, HFCS, SF6),大気汚染物質(NOx, SOx

環境負荷原単位の電子データ

1: PDFによる一覧表

論文の補助資料(Supporting Information)の26ページ目よりAppendixとして環境負荷の種類別に各部門の原単位(百万円あたり)を掲載しています。また,原単位の内訳(国内直接,国内間接,海外)を示し,GLIOモデルの構造に起因する原単位の不確実性を示す指標として,原単位の変動係数を求めています。これらと一覧表の表頭との対応は以下の通りです。

Total: 部門の百万円分の生産に伴い国内外で発生する環境負荷量(原単位)。Total = (D) + (S) + (F)です。
(D): 部門の百万円分の生産に伴いその部門(国内)から直接的に発生する環境負荷量(国内直接)
(S): 部門の百万円分の生産に伴い国内で間接的に発生する環境負荷量(国内間接)
(F): 部門の百万円分の生産に伴い海外で間接的に発生する環境負荷量(海外)
Coefficient of variance of the intensity:原単位の変動係数(%)

2: Text形式による一覧表

PDFによる一覧表をタブ区切りのファイルとして環境負荷の種類ごとに作成しています。日本語の部門名に対応するため,テキスト形式(.txt)で収録しており,MS-Excel(R)のワークシートにドラッグ&ドロップすることでPDFの一覧表と同じ書式で原単位の一覧を得られます。なお,ファイルはZIP形式で圧縮されています。

引用方法について

本データを利用した分析結果等を学会や論文等で報告する場合には,下記の引用例のように記載をお願いします。

Keisuke Nansai, Yasushi Kondo, Shigemi Kagawa , Sangwon Suh , Kenichi Nakajima, Rokuta Inaba, and Susumu Tohno (2012), Estimates of Embodied Global Energy and Air-Emission Intensities of Japanese Products for Building a Japanese Input-Output Life Cycle Assessment Database with a Global System Boundary, Environmental Science & Technology, 46(16), 9146-9154.

GLIOモデルに関するその他の文献

[1] Keisuke Nansai, Shigemi Kagawa, Yasushi Kondo, Sangwon Suh, Kenichi Nakajima, Rokuta Inaba, Yuko Oshita, Takashi Morimoto, Kazumasa Kawashima, Takuji Terakawa, and Susumu Tohno (2012) Characterization of economic requirements for a "carbon-debt-free country", Environmental Science & Technology, 46(1), 155-163.

GLIOモデルにより日本の消費者責任基準に基づくGHG排出量を推計しました。上記のGLIOモデルによるGHG原単位の算定にはこの論文で推計したGHG排出量データを用いています。推計方法はこの論文の補助資料(Supporting Information)に詳細に記述されています。

[2] Keisuke Nansai, Shigemi Kagawa, Yasushi Kondo, Sangwon Suh, Rokuta Inaba and Kenichi Nakajima (2009) Improving the completeness of product carbon footprints using a global link input-output model: the case of Japan, Economic Systems Research, 21(3), 267-290. (The International Input-Output Association (IIOA) のSir Richard Stone Prize受賞論文)

GLIOモデルの構造を最初に紹介した論文で,2000年を対象としたCO2排出量のパイロットデータを用いてグローバルCO2排出原単位を推計し,カーボンフットプリント分析への適用を行いました。

グローバル環境負荷原単位の購入者価格基準への変換

購入者価格基準のグローバル環境負荷原単位(.zip)(53.8MB)

上記に掲載しているエネルギー消費,GHG排出量,大気汚染物質量に関する生産者価格基準のグローバル環境負荷原単位を購入者価格基準に変換しました。購入者として内生部門と最終需要部門の全ての部門を対象にしています。生産者価格基準から購入者価格基準への変換方法については, 「文書ファイル」ページの(1)3EID作成方法の解説(2005年)をご参照ください。ファイルはzip形式で圧縮されていますので解凍してご使用ください。なお,データはMS-Excel形式(.xlsx)で格納されています。

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