COLUMN2024年11月号 Vol. 35 No. 8(通巻408号)

日本一高い観測現場 富士山頂にて

  • 沢田 近子(地球システム領域 物質循環観測研究室 高度技能専門員)

近年、日本最高峰である富士山の登山人気が益々高まっています。富士山はその標高の高さや独立峰であることから、地上付近の影響を受けにくいという大気観測の面においても恵まれた特質を持つ山です。国立環境研究所では富士山頂で、2009年から二酸化炭素濃度等の大気観測を継続的に行なっています。

写真1. 残雪が見られる7月初旬の富士山頂。建物は富士山特別地域気象観測所(旧富士山測候所)。
写真1. 残雪が見られる7月初旬の富士山頂。建物は富士山特別地域気象観測所(旧富士山測候所)。

観測機器が設置されている観測所は、7月から9月初旬の期間のみ入所可能となります。そのため、毎年夏になると富士山に登って機器の整備を行なっています。今年は7月9-10日と8月21日に実施しました。7月に登った時は悪天候で、山頂の気温は日中でも5℃程、猛烈な風が吹き荒れていました。筆者は危うく風に飛ばされそうになり、同行の寺尾に背中を押されながら観測所に辿り着きました。

写真2 観測所に設置している大気観測機器。空気試料の取り入れ口は屋外にある。
写真2 観測所に設置している大気観測機器。空気試料の取り入れ口は屋外にある。

観測機器は、二酸化炭素濃度計(写真2中央)と、空気をフラスコ容器に自動採取するフラスコサンプリングシステム(写真2左)を備えています。12個のフラスコに採取した1年分の試料を回収するとともに新しいフラスコを設置し、機器の整備を行いました。

8月は、冬季に機器を稼働させるためのバッテリー電源への切り替え作業がメインです。夏季を過ぎて閉所すると、来年の7月まで登ることができないので、入念に作業を行います。これからまた一年、富士山の貴重な大気データが蓄積されることを期待しつつ、下山しました。

写真3 山頂・剣ヶ峰からの展望。遠方に相模湾が見える。
写真3 山頂・剣ヶ峰からの展望。遠方に相模湾が見える。