最近の研究成果 2016年5月18-20日の間に北日本上空で観測されたシベリアバイオマス燃焼による一酸化炭素とエアロゾルの長距離輸送
最近、シベリアにおいて比較的大規模な森林火災が頻発しているが、北日本におけるシベリア森林火災から放出された一酸化炭素(CO)等の影響はあまり多く知られていない。
シベリアバイカル湖東側で激しい森林火災が発生した数日後の2016年5月18-20日に、北海道陸別上空で地上設置のフーリエ変換分光計(FTS)測定による高濃度COとライダー測定による自由対流圏の高度1-6 kmにおける高濃度エアロゾル層が観測された。その際にCOのカラム平均濃度(XCO)が5月19日11:15-13:50(JST)には150 ppbに達し、エアロゾル光学的厚さ*1のピーク値が、5月18日15:40(JST)には1.41、5月19日11:20 (JST)には1.28となった。
後方流跡線解析*2の結果、図1に示すように5月16-17日の間にシベリア森林火災の上空を通過した空気魂が陸別上空を通過したことがわかった。更に、札幌におけるAERONET*3の光学的厚さ、MODIS*4から推定した火災地点データ、IASI*5全量CO気柱量分布図を組み合わせることにより、ライダー測定による陸別上空における増加したエアロゾル濃度とFTS測定による高いXCOは、シベリア森林火災から輸送された煙流によることが確認できた。
北日本上空のシベリア森林火災の影響は、発生の規模・頻度や気象条件に依存し、更に大陸の人為起源COの濃度が影響することが考えられる。本研究はケーススタディであり、シベリア森林火災のこれらの影響の包括的な理解のためには限界があるため、日本上空の長期的な大気微量成分のモニタリングとそれぞれの起源の継続的な調査を行うことが必要である。
