COLUMN2023年4月号 Vol. 34 No. 1(通巻389号)

観測現場発季節のたより[18] 「らしさ」を求めずにいられない

  • 斉藤拓也(地球システム領域動態化学研究室 主幹研究員)

国立環境研究所は、南西から北東に長く延びる日本の両端の辺り、2か所で大気を観測しています。南西の波照間ステーション(沖縄県竹富町)と北東の落石岬ステーション(北海道根室市)は、直線距離で2900kmも離れているので、季節から何から大きく違います。ところが今年の冬は少し様子が違っていました。

なぜそんなに離れた両地点の様子がわかったのか。それはこの1月に両ステーションを「はしご」する機会があったからです。ちなみに私がステーションを訪れるのは、へそを曲げた分析装置をなだめて元のように動いてもらうためですので、訪問が重なるのは良くないサインです。

さて、私が訪れたとき、落石の最高気温は6.5度、波照間の最低気温は9.7度でした。最高気温と最低気温というハンデはあるものの、その差はわずか3度。かなり「肉薄」しています。どちらも1月としては異例の陽気、異例の寒気でした。特に落石では路面の雪も、いつものピリッとした空気もなく、岬の主であるシカたちにも戸惑いの表情が見られました。

ステレオタイプの枠にはめて、「~らしさ」を求めるのは過去の風潮になりつつありますが、季節感は期待通りであって欲しいものです。

写真1 2023年冬の落石岬にて、季節外れの陽気に戸惑いの表情を見せるシカ。
写真1 2023年冬の落石岬にて、季節外れの陽気に戸惑いの表情を見せるシカ。
写真2 北国らしさ全開だった2017年の落石岬。タワーへ続く未舗装路は雪でならされ、カッキーンと晴れ渡った空の下、快適なドライブが楽しめました。
写真2 北国らしさ全開だった2017年の落石岬。タワーへ続く未舗装路は雪でならされ、カッキーンと晴れ渡った空の下、快適なドライブが楽しめました。
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