最近の研究成果 降水量変化予測の不確実性低減に成功
21世紀末までの世界平均降水量変化予測には大きな不確実性がありますが、これまで誰もその不確実性を低減することが出来ませんでした。将来の降水量変化の主要因はたしかに温室効果ガスの濃度増加ですが、19世紀から現在までの気温や降水量のトレンド(変化傾向)には温室効果ガスの濃度増加だけでなくエアロゾル(大気汚染物質)の排出量増加の影響がかなり含まれており、過去の長期トレンドから将来予測の不確実性を低減するための情報を得ることが容易ではなかったためです。
我々は、世界平均エアロゾル排出量がほとんど変わらず気温や降水量のトレンドに影響しない期間(1980-2014年)に着目して、この期間の気候モデルと観測のトレンドを比較することで、エアロゾル排出量増加の影響を受けずに温室効果ガス濃度増加に対する気候応答の信頼性が評価できると考えました。図1の縦軸は67の気候モデルによる21世紀後半までの世界平均降水量の変化予測で、横軸は1980-2014年の世界平均気温トレンドです。両者の間には、統計的に有意な相関があり、近年の気温上昇が大きいモデルほど、将来の降水量増加が大きい傾向にあることが分かりました。近年のトレンドを観測と比較して過大評価するモデルは、将来予測も同様に過大評価すると考えることで、将来の降水量増加の予測幅の上限を引き下げることができました。
この研究によって、これまで多くの研究が行われてきた気温変化予測だけでなく、降水量変化予測の不確実性も低減できるようになり、気候変動の影響評価や対策の政策決定者に対して、より正確な情報を提供できると期待されます。