最近の研究成果 日本の影響評価で利用されてきた日射量変化予測の幅は十分か?
気候変動予測の不確実性は、世界に数十ある気候モデル(例えばCMIP5アンサンブル)による予測のばらつきで評価される。しかし一般的に、気候変動の影響評価研究で、全ての気候モデルの予測を利用することは研究資源の観点から難しいため、少数の気候モデルの予測を選んで使うことが多い。近年の日本の影響評価研究においては、省庁研究プロジェクトでの利用実績等の歴史的経緯からMRI-CGCM3.0、MIROC5、GFDL-CM3、HadGEM2-ESの4気候モデルが共通気候シナリオとして用いられてきた。
しかし、上に挙げた4つの気候モデルを共通気候シナリオとみなす妥当性については十分に検討されてこなかった。我々はCMIP5モデルのRCP2.6実験(2°C目標相当排出シナリオ)とRCP8.5実験(最悪排出シナリオ)における日本域の日射量変化予測を調べ、共通気候シナリオのばらつきの妥当性を検討した(図1)。
どの季節においても、ほとんどのモデルで日射量が増加していた。これは、日本の上空のジェット気流の位置が温暖化時に移動し、低気圧の経路が変わって雲量が減ることで日射が地上に届きやすくなるためである。
また共通気候シナリオの4モデルは、春の日射量変化の不確実性幅(CMIP5アンサンブルのばらつき)の下半分、夏・秋の上半分しかカバーしていないことも分かった。これは、多くの影響評価研究において、日射量変化予測の不確実性幅を十分に網羅できていないことを示唆している。また、今後の影響評価研究のために、モデルのサンプルを偏りが少なく選択する手法も開発した。