2016年7月号 [Vol.27 No.4] 通巻第307号 201607_307010

酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 29 低炭素社会と制度設計 —3R・低炭素社会検定より—

  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 一覧ページへ

3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】

検定試験問題から出題します。

問85低炭素都市に関する記述として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 67%

  • 環境モデル都市は、持続可能な低炭素社会の実現にむけて先駆的な取り組みをおこなうモデル都市として、政府によって選定された自治体である
  • 環境モデル都市の選定基準では、長期的な温室効果ガス排出の大幅削減(2050年に半減以上の削減)の考え方に沿った取り組みであることが奨励されている
  • コンパクトシティは、施設や住宅を集積させ移動距離を短くすることにより、運輸部門からのCO2排出量が低減することが期待される
  • バイオマスタウンとは、バイオテクノロジーの活用により、地域において食料の地産地消、旬産旬消を目指す都市である
ヒント
バイオマスタウンはバイオマスの総合的な利活用を行う地域です。
答えと解説

答え: ④

環境モデル都市は、持続可能な低炭素社会の実現にむけて先駆的な取り組みをおこなうモデル都市として、政府によって選定された自治体です。2013年度までに、千代田区、横浜市、下川町(北海道)、西粟倉村(岡山県)など大都市から小規模自治体まで23自治体が選定されています。

環境モデル都市の選定基準では、長期的な温室効果ガス排出の大幅削減(2050年に半減以上の削減)の考え方に沿った取り組みであることが奨励されています。

コンパクトシティは、施設や住宅を集積させ移動距離を短くすることにより、運輸部門からのCO2排出量が低減することが期待されています。

バイオマスタウンは、バイオテクノロジーの活用により、地域において食料の地産地消、旬産旬消を目指す都市ではなく、「域内において、バイオマスの総合的利活用システムが安定的・適正に構築される地域」を指します。バイオマスとは生物由来資源のことで、例えば廃棄される紙や製材木くず、下水汚泥などです。

  • *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです

問86「EU-ETS」の意味として、最も適切なものはどれか?

上級レベル

正答率 56%

  • 欧州エコツーリズム規格
  • 欧州環境配慮型交通システム
  • 欧州排出量取引制度
  • 欧州経済貿易戦略
ヒント
ETSはEmission Trading System(エミッション・トレーディング・システム)の略です。
答えと解説

答え: ③

EU-ETSは欧州排出量取引制度(The European Union Greenhouse Gas Emission Trading System)の略になります。EU-ETSは2005年に開始され、2005年〜2007年の第1フェーズ、2008年〜2012年の第2フェーズ、2013年〜2020年の第3フェーズの三つにわけ、改良を加えながら制度を運用しています。第1フェーズの排出削減目標は2005年比+8.3%と甘いものでしたが、実際の排出量は+0.98%に収まりました。第2フェーズでは2005年比−5.6%、第3フェーズでは2005年比−21%と厳しい目標が設定されています。

  • *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです

問872012年7月1日にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関する以下の記述のうち、最も適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 80%

  • 太陽光発電で発電された電力のみを買い取りの対象としている
  • 自然エネルギーで発電した電力を政府が買い取る
  • 電力の買い取り価格は発電方法によらず一律である
  • 買い取り価格は、発電・送電設備のコスト等の変化を考慮し、毎年見直される
ヒント
太陽光だけではなく風力発電なども対象であり、電気事業者が買い取る制度で、買い取り価格は発電方法により異なります。
答えと解説

答え: ④

電力固定価格買取制度(Feed-in Tariff、FIT)は、太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギーの普及促進のため、それらで得られた電力を政府が定めた価格で電気事業者が買い取る制度です。

日本では2009年に、太陽光発電の買い取り制度が導入されました。その後、2012年には、太陽光発電以外の再生可能エネルギー(風力発電、バイオマス発電など)に対する電力固定価格買取制度も導入されました。買い取り価格は、発電方式ごとに異なり、発電設備の建設コスト等の変化を考慮し、毎年見直されています。例えば、平成25年度の買取価格は太陽光発電(10kW以上)で36円/kWh(税含まず、以下省略)、風力発電(20kW以上)で22円/kWh、平成26年度の買取価格は太陽光発電(10kW以上)で32円/kWh、風力発電(20kW以上)で22円/kWhとなっていました。

なお、ドイツやスペインではこの制度により、再生可能エネルギーの導入が促進されました。

  • *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです

問88東京都の「温室効果ガス総量排出削減義務と排出量取引制度」に関する次の説明のうち、最も不適切なものはどれか?

上級レベル

正答率 24%

  • 2008年に東京都環境保護条例の改正に伴って導入された
  • ベースライン・アンド・クレジット方式と呼ばれる制度を用いている
  • 燃料、熱、及び電気の使用量が3カ年度連続して1,500kL以上の事業所は、温室効果ガス総量削減義務の対象となる
  • 総量削減義務対象の温室効果ガスは、燃料、熱及び電気の使用に伴い排出されるCO2が対象である
ヒント
東京都のこの制度は「キャップ・アンド・トレード」という方式で、上限設定(キャップ)と取引(トレード)からなる制度です。
答えと解説

答え: ②

東京都の「温室効果ガス総量排出削減義務と排出量取引制度」は欧州排出量取引制度(EU-ETS)などと同じ、「キャップ・アンド・トレード」という方式の制度を用いています。この方式は総量規制がある制度で、対象者(対象事業者)に対して排出量の総量削減義務を課す(キャップ)とともに、排出枠の取引(トレード)を認める方式です。

ベースライン・アンド・クレジット制度は同じく排出量取引制度の一つですが、総量規制のない制度です。対策がない場合に想定される排出量(ベースライン)から対策で削減した量をクレジットとして発行する仕組みで、CDM(クリーン開発メカニズム)などが該当します。

  • *正答率は第7回3R・低炭素社会検定受験者のものです
  • 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集

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