2014年10月号 [Vol.25 No.7] 通巻第287号 201410_287009

酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 10 森林 —3R・低炭素社会検定より—

  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 一覧ページへ

3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】

検定試験問題から出題します。

問271990年〜2005年における各地域の森林面積の増減を示した図がある。この図の【A】〜【C】にあてはまる地域の組み合わせとして、最も適切なものはどれか?

上級レベル

正答率 41%

  • A:南アメリカ、B:アジア、C:オセアニア
  • A:アジア、B:南アメリカ、C:オセアニア
  • A:オセアニア、B:アフリカ、C:アジア
  • A:アフリカ、B:オセアニア、C:南アメリカ
fig
ヒント
南アメリカとアフリカでは森林面積が大きく減少しています。一方、アジアは近年増加しています。
答えと解説

答え: ①

南アメリカとアフリカでは、1990–2000年、2000–2005年の間にそれぞれ4百万ha/年前後の森林面積が減少していることを理解していれば、② ③ ④が不適切であることを判断できますので、消去法で迷わずに正解が導けます。

人間による乱開発や乱獲、外来種の侵入などが原因で、貴重な森や生物が、自然の力では回復し難いスピードで失われつつあります。

グラフを見ると全体として、森林面積は大きく減少していますが、ヨーロッパやアジアの一部では増えていることも理解しておきましょう。

問28土地利用、土地利用変化および林業(LULUCF)分野の説明について、【A】に当てはまる単語として、最も適切なものはどれか? 森林に蓄積されている炭素の算定では、樹木の幹、枝葉や根のような生体バイオマスだけではなく、A についても算定に含まれている。

中級レベル

正答率 84%

  • 大気中のバイオマス
  • 大気中のブラックカーボン
  • 土壌のミネラル分
  • 土壌のバイオマス
ヒント
土壌にも炭素分が蓄えられていて、微生物活動により徐々にCO2に分解されていきます。
答えと解説

答え: ④

土地利用、土地利用変化および林業(LULUCF (Land Use, Land Use Change and Forestry))分野における温室効果ガス排出・吸収量の計算では、森林に蓄積されている炭素の算定において、樹木の幹、枝葉や根のような生体バイオマスだけではなく、土壌のバイオマス、落葉落枝(リター)、枯死木についても算定に含まれています(下図参照)。土壌のバイオマスとは、落葉落枝や枯死木がもととなって土壌に堆積した有機物です。土壌中のバイオマスの一部は微生物活動により徐々にCO2に分解されていきます。

fig

森林に蓄積されている炭素の算定対象

なお、地球上で土壌に蓄えられている炭素量は、地球上で植物が蓄えている炭素量よりも多く、土壌は植物の約3倍の炭素を蓄積しているとの報告もあります。

問29発展途上国の森林や湿原の開発により引き起こされる土壌炭素の減少によるCO2排出(REDD)が問題となっている。次のうち、この問題が最も深刻な国はどれか?

中級レベル

正答率 79%

  • べトナム
  • エジプト
  • インドネシア
  • インド
ヒント
カリマンタン島などに広大な熱帯雨林と熱帯泥炭をもつこの国で深刻な問題となっています。
答えと解説

答え: ③

REDD(Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation、途上国における森林減少及び森林劣化による排出の削減)とは、開発途上国における森林の破壊・劣化を回避することでCO2排出を削減することです。

森林や湿地の土壌中には、多くの炭素分が蓄積しています。それらの森林や湿地が開発されることにより、大量の土壌中炭素分が分解され、CO2が排出されます。インドネシアやブラジルなど森林や湿地を多く持つ発展途上国ではこのREDDに関する問題が深刻化しています。また、このREDDの取り組みはこれまでの京都議定書(第一約束期間)では含まれていなかったため、COPにおいて議論されています。

CO2森林面積に関して、現在は中国で増加傾向、インドで横ばいにあります。ベトナムの森林面積は植林の実施により、1990年から2000年、2010年と徐々に増加しています。エジプトの森林面積は国土面積のわずか0.1%であり、森林がほとんど存在しないため、森林減少が問題になってはいません。

  • *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
  • 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集

2014年1月12日に行われた第6回3R・低炭素社会検定の低炭素分野試験問題解説集が発行されました。詳細はhttp://www.3r-teitanso.jp/を参照してください。

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