2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号 201408_285011
【最近の研究成果】 1990年代の東アジア〜西オセアニア海洋上での大気環境
東アジアでは著しい経済発展が進んでおり、それに伴い、大気環境も変化していると考えられる。今回、1990年代の、海洋上(東アジアから西オセアニア)での大気の状況(大気中オゾン、大気エアロゾル、大気エアロゾル中の主成分の一つである非海塩性硫酸イオン及び降水)の調査結果を解析した。本報は、当時の調査結果が限られる1990年代の、かつ元来調査結果が希少な海洋上の情報を明らかとした点に特徴がある。
調査は、1993〜1998年(1995年を除く)の8、9月に、図1に示す航路により行われた。微小粒子状物質(PM2.5)の主な成分の一つでもある非海塩性硫酸イオンについては、発生源が多い北半球で高い濃度が観測され、緯度ごとの濃度分布の違いが明らかとなった(図2)。北緯20–40度での濃度レベル(4–5µg/m3)は、2000年代以降の日本国内で観測されるレベルと同程度であり、アジア大陸からの長距離輸送が示唆される結果であった。

図1調査航路

図2大気エアロゾル中の非海塩性硫酸イオン濃度(日平均値)の緯度分布
本研究の論文情報
- Precipitation chemistry and ozone and sulfate concentrations in the ocean atmosphere observed by multi-year cruising in East Asia and West Oceania (35°N–35°S, 100–135°E) in August and September
- 著者: Aikawa M., Hiraki T., Mukai H.
- 掲載誌: J. Atmos. Chem., (2014), 71(1), 65-78, DOI: 10.1007/s10874-014-9281-1.