2014年5月号 [Vol.25 No.2] 通巻第282号 201405_282004

ICUE 2014へのGCPつくば国際オフィスの貢献

  • GCPつくば国際オフィス 事務局長 SHARIFI Ayyoob(シャリフィ アユーブ)
  • GCPつくば国際オフィス リーダー(地球環境研究センター 主席研究員)山形与志樹

1. 背景

持続可能な発展のためのグリーンエネルギーに関する国際会議・ユーティリティエキシビジョン(International Conference and Utility Exhibition on Green Energy for Sustainable Development)が3月19〜21日にタイのパタヤで開催された。研究者やエンジニア、政策決定者などが世界各国から参加し、グリーンエネルギーと持続可能な発展に関する意見交換や研究成果、これまでの経験で得られた知識の紹介を行った。また、グリーンで持続可能な将来の発展を達成するためのさまざまな戦略について議論した。特に今回の会合では、環境汚染や温室効果ガス排出など、深刻な問題を引き起こした化石燃料に基づく現在の経済に代わる選択肢の開発について検討した。GCPつくば国際オフィスは二つの特別セッションを主催し、本会合に積極的に参加した。この二つのセッションでは、気候変動に適合した都市の発展に関する12の研究発表があった。なお、地球環境研究センターから筆者らのほかに村上大輔と松井加奈絵がセッションに参加した。

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GCPつくば国際オフィスが主催したセッションの様子(写真提供:ICUE 2014)

2. 気候変動の緩和策

一つ目のセッションのテーマは気候変動の緩和策であり、各研究は、建造物レベル、行政区域レベル、地域レベルなどのさまざまな空間スケールを対象に、再生可能エネルギー技術やその導入メカニズム(空間・構造・制度・行動)を議論した。検討された主なテーマは以下のとおり。

  • 農業部門において太陽光発電システムを促進するために必要な準備
  • 都市部における太陽光発電エネルギー技術の導入と低炭素社会実現への貢献
  • 時間単位の電力需要の詳細推計のためのダウンスケール手法の開発
  • 平日にはほとんど使用しない車を電気自動車に交換し、その蓄電池をスマートグリッドと連携するという、東京を対象とした革新的なシナリオ
  • 気候変動に対する適応策と緩和策のコベネフィットとトレードオフを考慮した、コンパクトシティ構築のシナリオ
  • 持続可能なエネルギー消費を促すための、世帯ごとの電力消費量の測定およびオンライン可視化システムの活用
  • 電気の共同利用システムの可能性を探るためのエージェントベース・シミュレーションモデルの開発

3. 気候変動の適応策

もう一つのセッションでは、気候変動の適応策について話し合われた。特にレジリエンス(復元力)に焦点が当てられた。このセッションの発表では、気候変動により都市の脆弱性が増したことが指摘され、これに対処するためには、レジリエンスの高いアセスメントの枠組みが重要であることが強調された。主な議論のテーマは以下のとおり。

  • 観測データに基づくリスク管理指標を判断するためのコミュニケーションシステムの活用
  • レジリエンスの原則における矛盾や相補を明らかにしつつ、その有効性を評価するための発展的なマルチエージェント(多様な主体)モデルを構築することの重要性
  • 何らかのショックに対するエージェント自体、あるいはエージェント間のつながりへの影響を考慮したマルチエージェントシステムの開発
  • 政策決定支援システムとして利用可能性な、都市環境レジリエンスの包括的インデックスの開発
  • 都市のヒートアイランド効果抑制の観点からの天空率の活用

両セッションとも多くの参加者を得た。発表の後、気候変動に対する適応策と緩和策の相乗効果とトレードオフ、および持続可能な発展のためのレジリエンスの考え方の意味合いについて、参加者の間で活発な意見交換が行われた。

  • 本稿はSHARIFI Ayyoobさんと山形与志樹さんの原稿を編集局で和訳したものです。原文(英語)も掲載しています。

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