2013年4月号 [Vol.24 No.1] 通巻第269号 201304_269002

南の島、絶景ポイントで酸性雨調査 〜全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会に参加して〜

沖縄県衛生環境研究所 (酸性雨広域大気汚染調査研究部会委員) 岩崎綾

1. 全国で酸性雨の共同研究

平成25年1月29日、国立環境研究所において全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会(以下、全環研酸性雨部会)の第2回会議が開催されました。部会長、理事委員、解析委員、支部委員、有識者、事務局の総勢24名が平成23年度全国酸性雨調査報告書のとりまとめとこれからの全環研酸性雨調査について熱い議論を交わしました。また、過去の4次調査(2003年〜2008年)のデータベース化についても議論されました。

photo. 第2回会議

全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会第2回会議

全環研酸性雨部会の役割や成果については、これまでの地球環境研究センターニュースや全国環境研会誌、大気環境学会誌にあるように、環境省の国内モニタリングと相互補完しながら日本の酸性雨調査に大きく貢献してきました。平成23年度の調査参加機関は53機関で調査地点数は約60地点でした。全国で同一手法により継続して調査が行われていることは全環研酸性雨部会の一番の強みであると思います。大学の研究室にいた頃も私は酸性雨の研究に携わっていたのですが、沖縄本島の南北6地点で蓋開閉装置のない降水のバルク試料を集めるのに必死でした。現在は全国共同で質の高い試料が集められており、当時の私からすれば夢のような研究環境です。

photo. 部会会議 photo. 部会会議

部会会議の様子

2. 沖縄県の調査地点

全環研酸性雨部会の調査地点として、沖縄県には大里と国設局の辺戸岬の二つがあります。大里の調査地点は南城市の沖縄県衛生環境研究所屋上にあり、降水自動採取機で採取する湿性沈着試料は週ごとに、ガス・エアロゾルなどの乾性沈着試料は2週間ごとに採取しています。辺戸岬は沖縄本島の最北端に位置し、広大な海と緑に囲まれた自然豊かな国頭村にあります。ここでは湿性沈着試料を日ごとに、乾性沈着試料は2週間ごとに採取しています。

photo. 国設辺戸岬酸性雨測定所

国設辺戸岬酸性雨測定所

3. これからも酸性雨広域大気汚染調査部会と共に

部会の活動は今年で23年目を迎えます。私はといえば、研究所に配属され酸性雨の担当になって2年のヒヨッコです。そんな私に、酸性雨研究とより深くかかわる機会と広い視野を与えてくれたのがこの部会です。年齢構成は20代から60代まで、男性女性とも幅広く参加されており、時に真面目に、時にざっくばらんに、知識・交流を深めています。もっと踏み込んだ研究を行いたい、そんな時には賛同者を募って全国を網羅する共同研究が行われています。部会では酸性雨の豊富な知識と経験のある先輩方が知恵や力を貸してくれます。いつもそこに心強い支えがある、この部会は酸性雨研究者にとってかけがえのない存在です。データの蓄積によってより詳細な大気汚染状況の把握をしていくこと、そして全国の酸性雨研究者たちのつながりをこれからも大切に繋いでいくこと、これが全環研酸性雨部会の存在意義だと感じています。すばらしい部会を生み育ててきてくださった先輩方に感謝いたします。

4. あとがき〜観測現場から〜

辺戸岬へは毎月通っていますが、当研究所からは車で片道2時間半の、沖縄県内ではかなり長いドライブになります。沖縄に暮らしていても、本島北部地域、特に国頭村に入ってからの海は本当にきれいだと感じます。しかし、沖縄の自然の美しさも感じながら、沖縄ならではの恐い経験もありました。つい最近のことですが、辺戸岬測定所の局舎のフェンス外で、ハブの死骸を見つけました。局舎のフェンスは隙間が大きく、追加でハブの侵入防止のために膝丈までのネット(通称ハブネット)がぐるりと張り巡らされており、それに守られて難を逃れたのかもしれません。局舎敷地内の草刈作業は、降水試料を適切に採取するためだけでなく、ハブの隠れ家を作らないためにも重要な仕事の一つです。酸性雨担当者はイオンクロマトグラフィーによる分析技術と共に草刈機の扱いが上達するという特典が付いてきます。

photo. ハブ

フェンス外で発見されたハブ(2012年12月撮影)

辺戸岬局舎屋上からは、光を浴びた濃い青色の太平洋が一望できます。作業に追われていてもふと見渡すと、まるで時間が止まったように感じることがあります。美しい自然が皆さまをお迎えします。ぜひ沖縄にお越し下さい。

photo. 辺戸岬局舎屋上から

辺戸岬局舎屋上から北を望む(隣は国環研の観測ステーション)

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